ものの人類学
人を動かすのはモノである。だからこそ、いわゆる物質文化研究ではない、真に【モノを主人公にした】人間中心主義を 越えた人類社会論を構 築するのだ。熟練の逆説/ものの介入/記号的なものの物質性/アフォーダンス等々——音や会話といった事象をも対象に斬新な方法・ 視点と溌剌とした議論で、新しい人類学を拓く秀作。 プロローグ(口絵写真):ものをして語らせよ 序章:なぜ「もの」の人類学なのか? [床呂郁哉・河合香吏] 第Ⅰ部 「もの」の生成・消滅・持続 1章 かたち・言葉・物質性の間 —陝北の剪紙が現れるとき [丹羽朋子] Key Words:陝北の剪紙,「もの」の現れ,感性的経験,記号的なものの物質性,反復と創造 2章 潜むもの,退くもの,表立つもの —会話におけるものと身体の関わり [菅原和孝] Key Words:対面相互行為,ものの介入,アフォーダンス,資源,直示 第Ⅱ部 「もの」と環境のネクサス 3章 「もの」の御し難さ —養殖真珠をめぐる新たな「ひと/もの」論 [床呂郁哉] Key Words:真珠,熟練の逆説,自然(環境)の御し難さ,「もの」との対話 4章 土器文化の「生態」分析 —粘土から「もの」へ [印東道子] Key Words:土器技術,技術変化,生態環境,技術適応,知識の身体化 エッセイⅠ 現れる「もの」 1 名前がかたちを得る場: ものと経験を動員するジャワバティックの伝統文様 [佐藤純子] 2 カシュタが人を動かす:ウズベク刺繍がもつ「もの」の力 [今堀恵美] 3 ものと人の関係性の「遊び」: バナナと人間は依存しあっているか? [小松かおり] 第Ⅲ部 「もの」と身体のダイナミクス 5章 土器つくりを知っている —エチオピアの女性土器職人の「手」と技法の継承 [金子守恵] Key Words:エチオピア,土器,女性職人,身体技法,技法を獲得する過程 6章 男性身体と野生の技法 —強精剤をめぐる自然・もの・身体 [田中雅一] Key Words:漢方,生命主義,広告,セックス,ゲテモノ エッセイⅡ 妖(怪)しい「もの」 1 パゴダと仏像のフェティシズム [土佐桂子] 2 身体から吸い出される「もの」: ラダックのシャーマニズム儀礼より [宮坂 清] 第Ⅳ部 「もの」のエージェンシー 7章 仮面が芸能を育む —バリ島のトペン舞踊劇に注目して [吉田ゆか子] Key Words:仮面,物性,芸能,もの中心の記述,ものらしくないもの 8章 「生きる」楽器 —スリンの音の変化をめぐって [伏木香織] Key Words:インドネシア,バリ・ガムラン,楽器,音の変化,音の「もの」性 9章 ものが見せる・ものに魅せられる —インドの占い師がもたらす偶然という「運命」 [岩谷彩子] Key Words:占い,偶然性,インデックス,ナイカン,チョーディ エッセイⅢ 揺らぐ「もの」 1 グローバル化するアボリジニ絵画,ローカル化する「芸術」 [窪田幸子] 2 太平洋諸島移民アーティストの身体と芸術のかたち [山本真鳥] 3 ほんものであり続けること: 「紅型」と「琉球びんがた」のあいだ [村松彰子] 第Ⅴ部 新たな「もの」論へ 10章 道具使用行動の起源と人類進化 [山越 言] Key Words:チンパンジー,アフリカ,霊長類,二足歩行,採食技術 11章 霊長類世界における「モノ」とその社会性の誕生 [黒田末寿] Key Words:霊長類,手,スガリ,モノの社会化,平等原則 12章 身体と環境のインターフェイスとしての家畜 —ケニア中北部・サンブルの認識世界 [湖中真哉] Key Words:インターフェイス,身体の拡張,アフォーダンス,擬家畜化,隠喩的思考 13章 チャムスの蝉時雨 —音・環境・身体 [河合香吏] Key Words:牧畜民チャムス,単独行動による放牧,音環境,ひとりであること,音の「もの」性 エピローグ:意志なき石のエージェント性 —「もの」語りをめざして [内堀基光] あとがき