【2024年】「人類学」のおすすめ 本 146選!人気ランキング
- よくわかる文化人類学[第2版] (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)
- これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門
- ようこそ文化人類学へ: 異文化をフィールドワークする君たちへ
- 人類学とは何か
- 詳論 文化人類学:基本と最新のトピックを深く学ぶ
- われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
- 人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)
- 生のものと火を通したもの (神話論理 1)
- 滋賀の暮らしと食 昭和30年代の生活に関する調査より (おうみ学術出版会)
- サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
他者と“ともに”学ぶこと—— 他者と向き合い、ともに生きるとは、どういうことか。 人類学は、未来を切り拓くことができるのか。 現代思想、アートをはじめ、ジャンルを超えた影響と挑発をあたえつづけるティム・インゴルド。 世界の知をリードする巨人が語る、人類学と人類の未来。 世界が直面する未曾有の危機にどう立ち向かうべきか。 インゴルドの思想の核心にして最良の人類学入門。 第1章 他者を真剣に受け取ること 第2章 類似と差異 第3章 ある分断された学 第4章 社会的なるものを再考する 第5章 未来に向けた人類学 解説 原注 読書案内
ほぼ地産地消が実践されていた昭和30年代の暮らしと食について、滋賀県内8地域を調査、食材の調達、加工、保存などのようすを記… ほぼ地産地消が実践されていた昭和30年代の暮らしと食について、奥永源寺や朽木の山村、湖に面した半農半漁の村など、滋賀県内8地域を調査。多様な湖魚・山菜・果実・獣肉の調達、野菜類の栽培・加工・保存のようすを記録。 いまこそ環境共生型の伝統的な暮らしと食のスタイルから学ぶべきことは多い。──食品スーパーはなく、ほぼ地産地消が実践されていた昭和30年代の暮らしと食に焦点をあて、奥永源寺や朽木の山村、琵琶湖や内湖に面した半農半漁の村など、滋賀県内8地域で聞き取り調査。多様な湖魚・山菜・果実・獣肉などの調達、穀類・野菜類の栽培・加工・保存のようすを記録。 はじめに 第1章 「滋賀の暮らしと食」その背景と特徴を探る 第2章 湖北の暮らしと食 第3章 奥永源寺の暮らしと食 第4章 安土の暮らしと食 第5章 野洲の暮らしと食 第6章 甲賀の暮らしと食──小佐治集落を中心に 第7章 伊香立の暮らしと食──生津集落の調査を中心に 第8章 志賀の暮らしと食 第9章 朽木針畑の暮らしと食 あとがき
市場、国家、社会… 断絶した世界が、「つながり」を取り戻す。 その可能性を、「構築人類学」という新たな学問手法で追求。 強固な制度のなかにスキマをつくる力は、「うしろめたさ」にある! 「批判」ではなく「再構築」をすることで、新たな時代の可能性が生まれる。 京都大学総長・山極壽一氏推薦! 世の中どこかおかしい。なんだか窮屈だ。そう感じる人は多いと思う。でも、どうしたらなにかが変わるのか、どこから手をつけたらいいのか、さっぱりわからない。国家とか、市場とか、巨大なシステムを前に、ただ立ちつくすしかないのか。(略)この本では、ぼくらの生きる世界がどうやって成り立っているのか、その見取り図を描きながら、その「もやもや」に向き合ってみようと思う。 ――「はじめに」より はじめに 第一章 経済――「商品」と「贈り物」を分けるもの 第二章 感情――「なに/だれ」が感じさせているのか? 第三章 関係――「社会」をつくりだす 「社会」と「世界」をつなぐもの 第四章 国家――国境で囲まれた場所と「わたし」の身体 第五章 市場――自由と独占のはざまで 第六章 援助――奇妙な贈与とそのねじれ 終 章 公平――すでに手にしているものを道具にして おわりに 「はみだし」の力
異文化接触に伴う緊張のなかでも、衝突をかわし、差別を避けながら、ともに生きていく人類の知恵とは。狩猟、婚姻、紛争などの人類学の基本的なテーマを、日本で編まれた民族誌を基礎に丁寧に解説。 序論:民族と世界 はじめに 1.文化人類学の歴史 2.文化とは 3.世界の変容、文化人類学の変貌 第1章 バリ島民:伝統舞踊と社会変化 はじめに 1.バリ島の概況 2.歴史 3.バリ・ヒンドゥー文化 (1)インドとバリのヒンドゥー文化(2)民俗方位(3)悪魔払いの儀礼(4)稲の精霊信仰 4.観光人類学 おわりに 第2章 ナバホ族:ネイティブ・アメリカンの歴史と宗教 はじめに 1.ネイティブ・アメリカンの移住と分布 2.ナバホ族の歴史 3.ナバホ族の世界観 4.伝統医療とアルコール依存症 おわりに 第3章 アラスカ・エスキモーの社会 はじめに 1.エスキモーの地域文化 2.環境の対比と双分社会 (1)夏の居住形態(2)冬の居住形態 3.社会 (1)家族(2)霊魂観 4.捕鯨エスキモーの事例 おわりに 第4章 アフリカ・ナイル上流のヌエル族:牧畜・血族・内戦 はじめに 2.ヌエル族の概況 (1)エヴァンズ=プリチャード(2)ヌエル・ランド 3.ヌエル族の社会 (1)政治体系(2)リネージの分節 4.婚姻 (1)年齢組と成人男性(2)インセスト・タブーと花嫁代償(3)生物学的父≠法的父の婚姻形態 5.スーダン内戦 おわりに 第5章 中央アフリカ:ピグミーの狩猟 はじめに 1.アフリカの概況 (1)自然(2)アフリカの狩猟民 2.ピグミーの歴史 (1)民族名称(2)歴史 3.ピグミーの社会 (1)バンド(2)社会組織(3)宗教と病気 4.狩猟 (1)伝統狩猟(2)ネット・ハンティング(3)農耕民との共生 5.独立後の混乱と内乱による環境破壊 おわりに 第6章 イスラム世界:モロッコ・フェズの社会生活と聖信仰 はじめに 1.民衆イスラム 2.イスラム教の教義 (1)コーランの教え(2)本質(3)信仰 3.聖者信仰 (1)聖者(2)聖者の霊力(3)現世利益と「取りなし」理論 4.モロッコの古代都市フェズ (1)モロッコの概況(2)フェズの概況(3)家庭生活 5.聖者祭り (1)ムーセム(Musem)(2)日程(3)場所·祭祀空間(4)祭りの参加者(5)部族対立の調停 6.「聖者」の役割 おわりに 第7章 トロブリアンド諸島の母系社会とクラ交易 はじめに 1.マリノフスキー 2.メラネシアの概況 3.クラ交易 (1)クラ交易の概説(2)クラ交易の社会的機能(3)クラ研究の展開 4.社会と母系制 (1)性肯定社会(2)結婚の意義(3)母系制(4)タブー(5)性と夢 おわりに おわりに
人類はいかにして形成されたか,人類と他の霊長類の類似と差異,人種と民族,経済,社会,法,宗教,芸術,文化等,自然人類学・文化人類学の両面から平易に解きおこす.大学教養過程のテキストとして最適.
◆街へ出る前に、フィールドへ行く前に◆ フィールドワーク、エスノグラフィー(民族誌)について、手紙の書き方、ノートの取り方から機器の扱い方まで、手取り足取り解説した本は多くあります。J・クリフォードらの『文化を書く』以来、文化を誰が、どこから、どう書くのか、という政治性が指摘されていますが、本書はそのような問題意識を組み入れながら、ポジショナリティ、自己再帰性、表象の政治、当事者研究などの基本概念を詳述し、介護、障害、ボランティアなどの新しい対象分野を取り上げ、さらにはフィールドに出たときに調査者が出会う初歩的な問題についても、体験をとおした適切なアドバイスをしています。これからのフィールドワークに必携の「思想的」ガイドブックといえましょう。 ワードマップ 現代エスノグラフィー─目次 はじめに 「新しい」アプローチ一覧 第一部 現代エスノグラフィーの展開 エスノグラフィー現場を内側から経験し記述する 『文化を書く』エスノグラフィー批判の衝撃 自己再帰性他者へのまなざし、自己へのまなざし ポジショナリティ誰が、どこから、どう見るのか ■コラム 厚い記述 表象の政治語る、語られる、語りなおす ポスト構造主義とポストモダニズム「知識」の断片性・不完全性・文脈依存性 第二部 エスノグラフィーの「新しい」アプローチ アクティヴ・インタヴュー質問者と回答者が協働する フェミニスト・エスノグラフィー「女」が「女」を調査する ネイティヴ・エスノグラフィー「内部者」の視点から調査する 当事者研究「自分自身でともに」見いだす アクション・リサーチ協働を通して現場を変革する チーム・エスノグラフィー他者とともに調査することで自らを知る ■コラム チームでの実践を振り返る ライフストーリー個人の生の全体性に接近する オートエスノグラフィー調査者が自己を調査する オーディエンス・エスノグラフィーメディアの利用を観察する マルチサイテッド・エスノグラフィーグローバルとローカルを繋ぐ 第三部 応用研究 アイデンティティ「なる」「する」様態に迫る ジェンダー・セクシュアリティ男/女の線びきを問いなおす 人種・エスニシティ越境する人々の意味世界を理解する 学校教師と生徒のまなざしを明らかにし、変えていく 医療・看護病いとケアの経験を記述する 障害経験される世界に接近する 生/ライフ「生き方」を主題化し表現する 社会運動・ボランティア「参与」しながら観察する メディア・大衆文化メディアが受容される文脈をさぐる 第四部 フィールドで出会う問題 調査の説明と同意 フィールドに入るときに 権力 フィールドのただなかで 親密性 フィールドのただなかで 守秘義務と匿名性 フィールドを後にするときに 利益 フィールドで得たもののゆくえ ■フィールドからの声 話してもらえる私になる 『ギャルとギャル男の文化人類学』の現場から お嬢様がお嬢様を調査するジレンマ 恋愛感情にまつわることからは逃れられない おわりに ブックガイド 事項索 人名・書名索引 装幀―加藤光太郎
文化人類学への誘い、ふたたび ファーストコンタクト再演 媒介としての文化 村のなかのテント 見晴らしのよい場所 民族誌のメイキングとリメイキング 未完のフィールドワーク 私の野蛮人 民族誌を再演する 文化への焦点化 首狩の理解から自己の解放へ いま、フィールドで何が起きているか
旧来の人類学のイメージを塗り替え、世界的に注目されるインゴルドの代表作待望の邦訳!〈線〉から開かれる知的興奮にみちた人類学。 マリノフスキーからレヴィ=ストロースへという未開の地の探索という人類学のイメージを塗り替え、世界的な注目を集める人類学者インゴルドの代表作。文字の記述から道路まで、〈線〉という切口から、新鮮な開かれる知的興奮。 人類学とは、人間がこの世界で生きてゆくことの条件や可能性を問う学問である! マリノフスキーからレヴィ=ストロースへと連なる、未開の地を探索する旧来の人類学のイメージを塗り替え、世界的な注目を集める人類学者インゴルドの代表作、待望の邦訳! 文字の記述、音楽の棋譜、道路の往来、織物、樹形図、人生… 人間世界に遍在する〈線〉という意外な着眼から、まったく新鮮な世界が開ける。知的興奮に満ちた驚きの人類学! 管啓次郎解説・工藤晋訳(原著LINES a brief history, Routledge, 2007) 日本語版への序文 謝辞 序論 第1章 言語・音楽・表記法 第2章 軌跡・糸・表面 第3章 上に向かう・横断する・沿って進む 第4章 系譜的ライン 第5章 線描・記述・カリグラフィー 第6章 直線になったライン 人類学の詩的想像力 訳者あとがき 工藤晋 さわやかな人類学へ 解説に代えて 管啓次郎 文献一覧
1世紀にわたる人類学の成果を総括し、人類学が今後いかなる道を歩むべきかを提示する。いま人類学は可能なのか、可能とするならばなにができるのか──著者の40年にわたるフィールドワークと透徹した思索の精華ともいうべきゴドリエ入門書。 序章 人類学はなんの役に立つのか 第1章 贈るモノ、売るモノ、売っても贈ってもダメでとっておいて継承しなくてはならないモノ 第2章 家族や親族に基礎をおく社会など存在したことがない 第3章 子どもをつくるには男と女のほかに必要なものがある 第4章 人間の〈性/セクシュアリテ〉は根本的に非社会的である 第5章 個人はいかにして社会的主体となるのか 第6章 複数の人間集団はどのようにして社会を構成するのか 結論 社会科学をたたえる 訳者あとがき 文献
グローバル・ネットワークが地球を覆い尽くす「人新世」時代においてその網の目からこぼれ落ちる他者の営みに人類の可能性を見出す。 近代のプロジェクトが推し進めてきたグローバル・ネットワークが、地球全体を覆い尽くす「人新世」時代と呼ばれる今日。近代化の網の目からこぼれ落ちる、過剰なる他者たちの営みから、人類の想像力の可能性を見出す。 近代化の網の目からこぼれ落ちる、過剰なる他者たちの営みから、いかに人類の想像力の可能性を見出すか――。 総勢12名の人類学者が対話・インタビュー形式で「人新世」時代を語る、最新の研究動向に迫る論集。 近代のプロジェクトが推し進めてきたグローバル・ネットワークは、地球全体を覆い尽くすまでに拡大した今日。それは、もはや地球の存在そのものが危ぶまれる、「人新世」時代へと突入したと呼ばれるようになった。 このような21世紀初頭の時代において、人類のさまざまな文化のあり方をつぶさに研究してきた文化人類学もまた、大きな岐路に立たされている。文化人類学という学問が、80億人に達した人類について、その過去と現在を問い、その未来の限界と可能性を探究するという壮大な規模の問題を扱う実践である以上、その担い手である人類学者の立場も関心も見解も多様にならざるをえないだろう。 本書は、こうした豊かな多様性を孕みつつ共通の感性でゆるやかにつながれた文化人類学という学問の実情をできる限りそのままに提示する試みた、文化人類学者たち自身による文化人類学という学的実践の実験的な民族誌である。 対話の形式で紡がれる本書は、現在進行中の文化人類学の実践の目的、対象、方法、意義などの一端が、地域・フィールドを異にする文化人類学者たち自身によってさまざまに語られると同時に、問答を応酬しながら相互に触発し合うことで、新たなパースペクティヴの予感を宿しながら未来の可能性を孕む種子や胚を懐胎してゆく姿を提示していく。 はじめに 序 章 「人新世」時代の文化人類学の挑戦(大村敬一) 第Ⅰ部 グローバル・ネットワークの外部からの挑戦 第1章 多重に生きる ―― カナダ・イヌイトの挑戦(大村敬一) 第2章 先住民運動の挑戦 ―― 新たな政治制度を目指して(深山直子) 第3章 アナーキズム社会の挑戦 ―― マダガスカルのヴェズの戦術の可能性(飯田卓) 第Ⅱ部 変質しゆくグローバル・ネットワーク 第4章 科学技術と気候変動の人類学――近代の「自然/人間」の二元論の再考(森田敦郎) 第5章 グローバル・エコノミーの隙間からの挑戦(中川 理) 第6章 プラネタリーヘルスの挑戦 ――「人新世」時代の医療と公衆衛生(モハーチ ゲルゲイ) 第Ⅲ部 変質しゆく人類 ―― 非人間との出会い 第7章 災害の人類学 ―― 近代を凌駕する他者の力に向き合う(木村周平) 第8章 人類の可変性 ―― 非人間とのもつれ合いのなかで(モハーチ ゲルゲイ/久保明教) 第Ⅳ部 人類の創造力の可能性 第9章 芸術 ―― 「仮構作用」の創造力(中谷和人) 第10章 日常に潜む「生きる力」 ―― 人類社会の根っこにある宗教(土井清美) 第11章 進化史のなかの人類 ―― 人類の創造性と可変性の進化史的基盤(入來篤史/河合香吏) 終 章 人類と地球の未来―― 多様性の苗床になる(大村敬一)
たとえば「人はなぜ太るのか?」.それは,ヒトが,元来は食物を多量に食べることができない環境に適応した動物だったからである一一私たちが人間独自の性質だと信じている事柄の多くは,ヒ卜が「サル」から引き継いでいる.家族,政治,戦争,言語等々,人間性の起源をサル学から解き明かした初の好著.大好評を得た単行本を新装改訂. はじめに 1 狼少年の神話 2 人はなぜ太るのか? 3 ヒトは白紙で生まれてこない 第1章 現代人は狩猟採集民 1 文明病 2 男と女はこんなに違う 3 狩猟採集時代の遺産? 4 行動の性差のメカニズム 5 女は優れている 第2章 人間性の研究の方法 1 人間性の研究の歴史 2 ヒトの生物学的特性の研究方法 第3章 社会生物学から見た人類 1 ヒトの繁殖行動 2 社会生物学に反する習慣? 第4章 社会の起源 1 霊長類集団の多様性 2 生態と社会 3 近親援助(ネポチズム) 第5章 互酬性の起源 1 互酬性の進化 2 霊長類における互酬的援助行動 3 ヒトの互酬的利他行動と互酬性 4 残された課題 第6章 家族の起源 1 インセスト回避の起源 2 人間家族における労働の性的分業 3 性的分業の起源をめぐる四つの問題 4 配偶関係 5 子どもの依存期間の長期化 6 生計活動の性差 7 食物分配と交換の問題 8 コミュニティ、家族の誕生と排卵の隠蔽 第7章 攻撃性と葛藤解決 1 攻撃性 2 葛藤解決 3 戦 争 第8章 文化の起源 1 学 習 2 文化の定義 3 霊長類の文化 4 霊長類における社会的伝達 5 ヒトの文化 第9章 言語の起源 1 野生霊長類の初期の音声研究 2 ヒトの音声言語と霊長類の音声の相違 3 飼育下の類人猿の言語研究 4 言語の起源 第10章 知能の進化 1 知能進化の二つの仮説 2 脳の発達程度の種間比較 相対脳重/相対新皮質サイズ 3 生態仮説 4 社会仮説 5 知能と認識適応 6 どちらが正しい? 第11章 初期人類の進化 1 最後の共通祖先 2 共通祖先の森林での行動様式 3 二足歩行の起源と初期人類の生活 4 乾燥疎開林での適応 5 初期人類の社会構造 6 原人の段階 第12章 終 章 1 共有地の悲劇 2 経済成長の内幕 3 進歩の幻想 4 どうすべきか? あとがき 改訂版:補記 参考文献 索 引
人を動かすのはモノである。だからこそ、いわゆる物質文化研究ではない、真に【モノを主人公にした】人間中心主義を 越えた人類社会論を構 築するのだ。熟練の逆説/ものの介入/記号的なものの物質性/アフォーダンス等々——音や会話といった事象をも対象に斬新な方法・ 視点と溌剌とした議論で、新しい人類学を拓く秀作。 プロローグ(口絵写真):ものをして語らせよ 序章:なぜ「もの」の人類学なのか? [床呂郁哉・河合香吏] 第Ⅰ部 「もの」の生成・消滅・持続 1章 かたち・言葉・物質性の間 —陝北の剪紙が現れるとき [丹羽朋子] Key Words:陝北の剪紙,「もの」の現れ,感性的経験,記号的なものの物質性,反復と創造 2章 潜むもの,退くもの,表立つもの —会話におけるものと身体の関わり [菅原和孝] Key Words:対面相互行為,ものの介入,アフォーダンス,資源,直示 第Ⅱ部 「もの」と環境のネクサス 3章 「もの」の御し難さ —養殖真珠をめぐる新たな「ひと/もの」論 [床呂郁哉] Key Words:真珠,熟練の逆説,自然(環境)の御し難さ,「もの」との対話 4章 土器文化の「生態」分析 —粘土から「もの」へ [印東道子] Key Words:土器技術,技術変化,生態環境,技術適応,知識の身体化 エッセイⅠ 現れる「もの」 1 名前がかたちを得る場: ものと経験を動員するジャワバティックの伝統文様 [佐藤純子] 2 カシュタが人を動かす:ウズベク刺繍がもつ「もの」の力 [今堀恵美] 3 ものと人の関係性の「遊び」: バナナと人間は依存しあっているか? [小松かおり] 第Ⅲ部 「もの」と身体のダイナミクス 5章 土器つくりを知っている —エチオピアの女性土器職人の「手」と技法の継承 [金子守恵] Key Words:エチオピア,土器,女性職人,身体技法,技法を獲得する過程 6章 男性身体と野生の技法 —強精剤をめぐる自然・もの・身体 [田中雅一] Key Words:漢方,生命主義,広告,セックス,ゲテモノ エッセイⅡ 妖(怪)しい「もの」 1 パゴダと仏像のフェティシズム [土佐桂子] 2 身体から吸い出される「もの」: ラダックのシャーマニズム儀礼より [宮坂 清] 第Ⅳ部 「もの」のエージェンシー 7章 仮面が芸能を育む —バリ島のトペン舞踊劇に注目して [吉田ゆか子] Key Words:仮面,物性,芸能,もの中心の記述,ものらしくないもの 8章 「生きる」楽器 —スリンの音の変化をめぐって [伏木香織] Key Words:インドネシア,バリ・ガムラン,楽器,音の変化,音の「もの」性 9章 ものが見せる・ものに魅せられる —インドの占い師がもたらす偶然という「運命」 [岩谷彩子] Key Words:占い,偶然性,インデックス,ナイカン,チョーディ エッセイⅢ 揺らぐ「もの」 1 グローバル化するアボリジニ絵画,ローカル化する「芸術」 [窪田幸子] 2 太平洋諸島移民アーティストの身体と芸術のかたち [山本真鳥] 3 ほんものであり続けること: 「紅型」と「琉球びんがた」のあいだ [村松彰子] 第Ⅴ部 新たな「もの」論へ 10章 道具使用行動の起源と人類進化 [山越 言] Key Words:チンパンジー,アフリカ,霊長類,二足歩行,採食技術 11章 霊長類世界における「モノ」とその社会性の誕生 [黒田末寿] Key Words:霊長類,手,スガリ,モノの社会化,平等原則 12章 身体と環境のインターフェイスとしての家畜 —ケニア中北部・サンブルの認識世界 [湖中真哉] Key Words:インターフェイス,身体の拡張,アフォーダンス,擬家畜化,隠喩的思考 13章 チャムスの蝉時雨 —音・環境・身体 [河合香吏] Key Words:牧畜民チャムス,単独行動による放牧,音環境,ひとりであること,音の「もの」性 エピローグ:意志なき石のエージェント性 —「もの」語りをめざして [内堀基光] あとがき
鍛冶屋と鎚の対話、神が宿るとされる石等、世界各地の多様な「もの」と人間の関係を分析し、「ひと」と「もの」の境界に迫る。 「ひと」と「もの」の境界は何か。それは極めて不明瞭で流動的で、両者はときに一体となる。鍛冶屋と鎚の対話、将棋ソフトと人間の棋士の相互作用等、多様な事例をもとに編み上げた、人間中心主義を超える斬新な人類社会論。 日々スマホを使ってチャットをし,乗り物を使って移動し,パソコンを開いて思考する私たち.これらの「もの」は非人間の「もの」なのか,「ひと」の一部なのか,それとも私たち自身がじつは「もの」なのか? 鍛冶屋と鎚の対話,将棋ソフトと人間の棋士の相互作用,ひとが「ひとでなし」化されたホロコースト等、世界各地の多様な事例をもとに「もの」と「ひと」の混淆した関係を暴く,斬新な人類社会論. 序 章 新たな「もの」の人類学のための序章 —脱人間中心主義の可能性と課題 [床呂郁哉・河合香吏] 1 「もの」からの出発 2 「もの」をめぐる逆説的状況 3 関連諸分野における「もの」への回帰 4 人類学における「もの」研究の系譜 5 新たな「もの」概念へ 6 本書の扱う問題群—脱人間中心主義的な人類学へ向かって 7 本書の構成と各章の概要 8 結びに代えて—脱人間中心主義的人類学の可能性と課題 第Ⅰ部 ひとともののエンタングルメント 第1章 ものが生まれ出ずる制作の現場 —鉄と道具と私の共同作業 [黒田末寿] KEY WORDS:農鍛冶,手仕事,道具の循環,共成長,制作の対話モデル,ものの主体化,未完の思想 1 鍛冶見習い 2 技術者松浦清さん 3 鍛冶の基本作業 4 鉄を打つ感覚 5 ものが私を呼んでいる 6 制作者・道具・使用者の共なる成長 7 ものが生まれ出ずる文化 8 ものが生まれ出ずる文化の広がりと制作の両義性 9 成長する制作物,未完の思想 第2章 「もの」が創発するとき —真珠養殖の現場における「もの」,環境,人間の複雑系的なエンタングルメント [床呂郁哉] KEY WORDS:真珠養殖,流体的なテクノロジー,エンタングルメント,創発 1 「ひと」と「もの」のエンタングルメントの人類学へ 2 真珠とは何か 3 真珠養殖の民族誌—近代的真珠養殖技術の概要 4 流体的なテクノロジーと「もの」・環境・人間のエンタングルメント 5 「もの」の創発と複雑系—設計主義を越えて 6 結語—新たなマテリアリティ研究へ向けて 第3章 存在論的相対化 —現代将棋における機械と人間 [久保明教] KEY WORDS:将棋,コンピュータ,存在論的転回,比較,可塑性 1 怖がらないコンピュータ 2 それはいかなる転回か 3 比較の可塑性 4 相対化の実定性 Column 1 人工物を食べる—遺伝子組み換えバナナの開発 [小松かおり] EYWORDS:遺伝子組み換え,ゲノム編集,バナナ 第Ⅱ部 もののひと化 第4章 絡まりあう生命の森の新参者 —ボルネオ島の熱帯雨林とプナン [奥野克巳] KEY WORDS:諸自己の生態学,意思疎通,狩猟民プナン,複数種の絡まりあい,マルチスピーシーズ人類学 1 諸自己の生態学にみられる意思疎通 2 エクアドル・アヴィラの森のハキリアリをめぐる複数種の絡まりあい 3 ボルネオ島の熱帯雨林の生態学 4 ブラガの森の一斉開花・一斉結実期における複数種の絡まりあい 5 森の新参者たちの過去,現在,未来 第5章 サヴァンナの存在論 —東アフリカ遊牧社会における避難の物質文化 [湖中真哉] KEY WORDS:存在論的比較,国内避難民,遊牧,レジリアンス,最低限のもののセット 1 東アフリカ遊牧社会における存在論 2 紛争と国内避難民 3 遊牧民の国内避難民の物質文化悉皆調査 4 避難の物質文化—民族集団B,C,D の比較分析 5 最低限のもののセット 6 サヴァンナの存在論へ向けて 第6章 石について —非人工物にして非生き物をどう語るか [内堀基光] KEY WORDS:自然物,人工物,岩田慶治,五来重,アニミズム 1 「ひと」の手にならない「もの」 2 「ひと」の痕とその連鎖 3 「もの」に「ひと」を見る—岩田アニミズム 4 「もの」に「ひと」を見る—石の宗教 5 より「即物的」に Column 2 観察するサル,観察される人間 —非人間であるとはどのようなことか [伊藤詞子] KEY WORDS:人間と非人間,フマニタスとアントロポス,自己と他者,区別と関係 第Ⅲ部 ひとのもの化 第7章 「もの人間」のエスノグラフィ —ラスタからダッワ実践者へ [西井凉子] KEY WORDS:もの人間,ラスタ,ダッワ,髪,声,水 1 「もの人間」という事態 2 ファイサーンとポーンの住むパーイという町 3 ラスタの世界 4 ラスタからダッワへの移行 5 ダッワ実践者になる 6 結論にかえて—もの人間,生成する出来事 第8章 中国黄土高原に潜勢する〈人ならぬ—もの〉の力 [丹羽朋子] KEY WORDS:中国黄土高原,儀礼行為,イメージ=力,変異する出来事としての「もの」, 陰陽の境界域,剪紙が描く生の力線 1 〈人ならぬ—もの〉とはなにか 2 黄土高原の〈天地〉に生動する非人格的な力の捉え方 3 徴候的な力に触れる—災いへの対処儀礼 4 鬼への変化と孝子への変身—陝北の葬送儀礼 5 生生不息の剪紙—老女たちが描く生々流転する世界 6 まとめに代えて 第9章 〈ひとでなし〉と〈ものでなし〉の世界を生きる —回教徒とフェティシストをめぐって [田中雅一] KEY WORDS:アウシュヴィッツ,ホロコースト,フェティシズム,商品カタログ,ゾンビ 1 人とものとの否定的な関係 2 アウシュヴィッツの回教徒〈ひとでなし〉の出現 3 複製技術とフェティシズム—〈ものでなし〉の出現 4 ゾンビ・回教徒・フェティシスト Column 3 音となったコトバ—インドネシア,ワヤン・ポテヒの出場詩 [伏木香織] KEY WORDS:音,言葉,文字,ワヤン,ポテヒ,布袋戯,su liam pek,suluk,インドネシア,東ジャワ 第Ⅳ部 新たなもの概念 第10章 数からものを考える —『無限の感知』を参照しつつ [春日直樹] KEY WORDS:数,無限,神話,支払い,リズム 1 なぜ数をもちだすのか 2 パプアニューギニア,イクワィエ人の数え方 3 数の構造とイクワィエ人の再生産 4 神と人間,男と女 5 1,2,1,2,……の反復と無限 6 数とものの結びつき 7 「項目と数」によるアナロジー 8 リズムを含めて考える 9 ものを数で考えること 第11章 五感によって把握される「もの」 —知覚と環境をめぐる人類学的方法試論 [河合香吏] KEY WORDS:環境,五感,生態的参与観察,経験の共有,共感 1 「身の回り世界」と知覚 2 背景—「音」のもの性についての試論 3 五感をめぐる二つの視点—五感の統合性と五感の共鳴 4 知覚を扱う方法論—生態的参与観察 5 「五感」に基づく知覚世界とその社会的共同性(五感の共鳴)の普遍性に向けて 6 結びにかえて Column 4 使い終えた授業ノートをめぐって—ゴミとして識別されていく過程を人—「もの」関係としてとらえる試み [金子守恵] KEY WORDS:授業ノート,ゴミ,人—「もの」関係 第Ⅴ部 ものの人類学を超えて —動物研究と哲学からの視線 第12章 「人間」と「もの」のはざまで —「動物」から人類学への視点 [中村美知夫] KEY WORDS:動物の視点,存在論的転回,非人間,「自然」と「文化」,「普遍」と「特殊」 1 動物は「もの」を超える? 2 動物から人類学を見る 3 人間と非人間のはざまで—サル学者の「捻れ」た立場 4 「転回」と人類学 5 「非人間」について 6 動物の主体性なるもの 7 「自然」と「文化」 8 人類学者という「われわれ」? 9 人類学のゆくえ 第13章 〈もの自体〉を巡る哲学と人類学 [檜垣立哉] KEY WORDS:思弁的実在論,もの自体,メイヤスー,大森荘蔵 1 〈「もの自体」の形而上学〉 2 思弁的実在論ともの 3 祖先以前的な「もの」 4 類似の問い—大森荘蔵 5 非相関主義の射程 6 課題の総覧 索引 執筆者紹介
民俗研究映像「盆行事とその地域差」 葬儀は誰がするのか、してきたのか? 祖霊とみたまの歴史と民俗 葬法と衛生観念 自動車社会化と沖縄の祖先祭祀 列島の民俗文化と比較研究 討論
無生物である「モノ」が人へとはたらきかける一一—「人とモノと身体」の相互関係をフェティシズム概念から斬るシリーズ,第1巻は理論編.宗教,経済,精神分析・性におけるフェティシズム概念,フェティッシュを考える上で無視できないモノ研究,そしてこうした理論的研究がわれわれにもたらす展望,この三部から問う。
文化人類学者とともに「働くこと」のポジティブな未来を探究する人気ポッドキャスト「働くことの人類学」、 待望の【活字版】!! 文化人類学者とともに「働くこと」のポジティブな未来を探究する人気ポッドキャスト「働くことの人類学」、 待望の【活字版】!! 文化人類学者が、それぞれのフィールドで体験した 知られざる場所の知られざる人びとの「働き方」。 それは、わたしたちが知っている「働き方」となんて違っているのだろう。 逆に、わたしたちはなんて不自由な「働き方」をしているのだろう。 狩猟採集民、牧畜民、貝の貨幣を使う人びと、 アフリカの貿易商、世界を流浪する民族、そしてロボット........が教えてくれる、 目からウロコな「仕事」論。 わたしたちの偏狭な〈仕事観・経済観・人生観〉を 鮮やかに裏切り、軽やかに解きほぐす、笑いと勇気の対話集。 ゲスト:柴崎友香/深田淳太郎/丸山淳子/佐川徹/小川さやか/中川理 /久保明教 ◼️巻頭対談 ありえたかもしれない世界について 柴崎友香 + 松村圭一郎 【第1部|働くことの人類学】 貝殻の貨幣〈タブ〉の謎 深田淳太郎 ひとつのことをするやつら 丸山淳子 胃にあるものをすべて 佐川徹 ずる賢さは価値である 小川さやか 逃げろ、自由であるために 中川理 小アジのムニエルとの遭遇 久保明教 【第2部|働くこと・生きること】 2020年11月「働くことの人類学」の特別編として開催されたイベント「働くことの人類学:タウンホールミーティング」。 オンラインで4名の人類学者をつなぎ、参加者xの質問を交えながら「働くこと」の深層へと迫った白熱のトークセッション。デザインシンキングからベーシックインカムまで、いま話題のトピックも満載のユニークな「働き方談義」を完全収録。 深田淳太郎×丸山淳子×小川さやか×中川理 ホスト=松村圭一郎 進行=山下正太郎・若林恵 【論考】 戦後日本の「働く」をつくった25のバズワード 【働くことの図書目録】 仕事と自由をもっと考えるためのブックガイド 松村圭一郎/深田淳太郎/丸山淳子/佐川徹/小川さやか/中川理/久保明教/コクヨ野外学習センター 【あとがき】 これは「発信」ではない 山下正太郎
ヒトがサルからもらったもの──サル学が描く原始人類社会のモデル。サルからヒトは何をもらい、何を捨てたのかを考えます──サル… ヒトがサルからもらったもの──サル学が描く原始人類社会のモデル。サルからヒトは何をもらい、何を捨てたのかを考えます──サル学の冒険。 ■ ニホンザルの抱擁行動は、サル社会の何を反映しているのでしょうか。自己意識の発生? ヒトとともに長い足に進化したパタスモンキーは、その進化をもたらした条件について、何を語ってくれるのでしょうか。 ■ 抱擁を含む接触行動と採食行動、また生育集団から出てゆくワカモノオス・ワカモノメスの行動半径、これらから浮かび上がる初期人類の社会構成とは。一夫多妻、多夫多妻、それとも一妻多夫? 父系、あるいは母系? サルからヒトは何をもらい、何を捨てたのかを考えます──サル学の冒険。 はじめに ──なぜいま、〝ふつう〟のサルから人類の起源と進化を探るのか サル学の現場から① 野外研究とセレンディピティ 第1章 ニホンザルの社会行動の文化 サル学の現場から② ニホンザルの稀な行動 第2章 ヒトの社会の起源とその進化 サル学の現場から③ 金華山A群第一位オス・キヨシロウの移出 第3章 ヒトの長肢化の選択圧──平行進化 サル学の現場から④ 発展途上国の僻地での暮らし
柳田國男の生い立ちと学問的背景 柳田國男旧蔵考古資料とは? 柳田國男はどんな考古資料を収集したのか 柳田考古遺物の採集地はどこか? 1 明治後期における柳田國男の旅行先 柳田考古遺物の採集地はどこか? 2 樺太紀行の旅程 柳田考古遺物の採集地はどこか? 3 南樺太の領有と当時の人類学者たちの動向 柳田考古遺物の採集地はどこか? 4 「樺太紀行」以後のサハリン島における考古学の展開 お雇い外国人の活躍と一八八〇年代の「日本人種論」 日本人研究者による人種論の始まり 柳田國男の考古遺物収集と山人論の形成 古代史学者喜田貞吉の日本民族論と柳田國男との関係 鳥居龍蔵の固有日本人論 形質人類学者による日本人種論 柳田國男はなぜ考古学を批判し、考古学と決別したのか 自然科学と文学 柳田國男と南方熊楠との交流 山人論から稲作民俗論へ 文学との決別が柳田民俗学を生んだのか 民俗学の誕生と考古学への意識 まとめ
人類の誕生と進化の歴史、日本列島に渡来したホモ・サピエンスの活動などをわかりやすく解説する。 これまでの科学的学説を紹介し、現在定説化しているものを基本にしながら、人類学、遺伝学(分子人類学)の流れを整理。人類の誕生と進化の歴史、日本列島に渡来したホモ・サピエンスの活動などをわかりやすく解説する。 ヒトはどこから来たのか――。 これまでの科学的学説を紹介し、現在定説化しているものを基本にしながら、人類学、遺伝学(分子人類学)の流れを整理。人類の誕生と進化の歴史、日本列島に渡来したホモ・サピエンスの活動などをわかりやすく解説する。 はじめに 第一部 人類の起源 第一章 霊長類の誕生とダーウィンの挑戦 ●第一節 ビッグバンから地球と人類の誕生まで ●第二節 ダーウィンの『種の起源』と進化論 ●第三節 人類のアフリカ起源説と多地域進化説 ●第四節 DNAと分子人類学の発展 第二章 人類の進化 ●第一節 チンパンジーとの分岐と猿人の出現 ●第二節 ホモ属の出現と原人、旧人 ●第三節 ネアンデルタール人とデニソワ人 ●第四節 アフリカでのホモ・サピエンス 第三章 出アフリカから世界への拡散 ●第一節 ホモ・サピエンスの「出アフリカ」 ●第二節 ユーラシア大陸への展開 ●第三節 ホモ・サピエンスのオセアニアへの拡散 ●第四節 最後の大陸・南北アメリカへ 第四章 古代農業革命と歴史時代への移行 ●第一節 古代の農業革命 ●第二節 農業革命と戦争・ゲノムの変化 ●第三節 歴史時代のさまざまな変革と限界 ●第四節 人類と言語について 第五章 今後の人類の課題 ●第一節 自然現象と関連した課題 ●第二節 植民地主義と核兵器の廃絶 ●第三節 「人新世」の提起 第二部 日本人の起源 第一章 日本の後期旧石器時代 ●旧石器時代の地理的、歴史的特徴 第二章 縄文時代の一万二〇〇〇年 ●第一節 分子人類学からの視点 ●第二節 縄文の名称と特徴、一万二〇〇〇年の長さ ●第三節 縄文人の衣食住確保と食生活 ●第四節 縄文時代の主要な道具 ●第五節 三内丸山遺跡、上野原遺跡などの事例 第三章 弥生時代の水田稲作と金属器など ●第一節 弥生時代の定義とDNAの変化 ●第二節 階級社会の成立と戦争、金属器の普及 ●第三節 琉球列島集団、北海道集団の成立と弥生時代 ●第四節 崎谷満氏の「縄文主義」と「長江文化神話」批判 第四章 古墳時代から飛鳥時代へ ●第一節、古墳時代の王権確立と人口増加 ●第二節 飛鳥時代の変化 第五章 日本の歴史時代を縦断する ●第一節 歴史時代の日本の「革命」 ●第二節 日本史の時代区分について ●第三節 日本が直面した危機的事件 第六章 日本語の起源について ●第一節 日本語の起源についての代表的な説 ●第二節 縄文語の探求と太平洋沿岸言語圏 ●第三節 日本語の起源に関するさまざまな説 ●第四節 最近の国際研究チームの発表 ●第五節 日本語のルーツに関する今後の課題 第七章 日本人起源論の系譜 ●第一節 明治初頭の外国人の「日本人起源論」 ●第二節 大学アカデミーと日本人起源説 ●第三節 分子人類学者らの「二重構造説」批判 第八章 今後の課題 おわりに 参考文献 ■第一部コラム 宇宙~人類略史年表/チャールズ・ダーウィンの年譜/DNAのコンタミネーション/主な遺跡の発見年表/人類進化の系統表/ネアンデルタール人関連略史/虫歯の人類史/ヒトとチンパンジーの成長期間/英国のビルトダウン人事件/シルクロードと東西交流 ■第二部コラム 沖縄で発見された主な旧石器時代遺跡/日本の五大火山爆発/アイヌ人と和人の戦いと近年の法的措置/太安万侶の墓
ペア/家族から民族/国家まで,ヒトはなぜ「集まる」のか? 集団形成における「暴力」と「誘惑」の役割,「見えない仲間」を描き出す表象能力,構造化されたsocietyにおける非構造のsocialなど,集団形成のメカニズムを進化の中で解き明かす.霊長類学と生態・社会文化人類学の第一人者による,本格的な共同研究. 序章 集団:人類社会の進化史的基盤を求めて[河合香吏] 1●はじめに 2●人類学と霊長類学における集団研究と進化論 3●伊谷純一郎の人類社会の進化論とフィラバンガの行列 4●本書の内容 5●用語について 6●今村仁司の存在 第1部 社会性の進化 1章 非構造の社会学:集団の極相へ[足立 薫] Keywords:非構造,生活形,混群,霊長類社会学,種社会 1●はじめに 2●社会構造進化論とBSU 3●構造と非構造 4●生活形の社会学 5●非構造から進化をみる 6●おわりに 2章 単独者の集まり:孤独と「見えない」集団の間で[内堀基光] Keywords:単独者,孤独,ペア,共在様態,ネットワーク 1●孤独から 2●集団性と社会性 3●ひとりとペア,そして人の群れ 4●「集まり」の効用 5●集団とネットワーク 6●「集まる」ことから制度へ 3章 人間の共同性はどこから来るのか?:集団現象における循環的決定と表象による他者分類[北村光二] Keywords:集団現象,進化,対称的な他者,循環的決定,分離された表象 1●はじめに 2●集団現象の生物学的基礎 3●群居的な生活形を採用した系統における集団現象 4●人間社会における環境との関係づけの活動の集合化 5●おわりに:サルと人間の間の差異を橋渡しするもの 4章 霊長類における集団の機能と進化史:地理的分散の性差に着目して[中川尚史] Keywords:系統的慣性,社会構造,淘汰圧,適応,父系社会 1●はじめに 2●社会構造の類型化 3●現在の社会生態学モデル 4●地理的分散の視点から父系社会の進化史を考える 5●まとめに代えて:初期人類の社会構造に関する新仮説 Article 1 チンパンジーの集団:メスから見た世界[伊藤詞子] Keywords:できごと,離合集散,全体性,境界,構造 第2部 社会集団のなりたち 5章 集団のオントロギー:「分かち合い」と生業のメカニズム[大村敬一] Keywords:カナダ・イヌイト,生業,食べ物,分かち合い,贈与 1●はじめに:出発点としての一元的な世界 2●日常世界を生成する社交の装置:イヌイト社会における生業 3●「信頼」と「誘惑」:イヌイトの生業における「人間」と「野生生物」 4●集団のオントロギー:人類社会の進化史的基盤としての「分かち合い」 6章 暴力と集団の自己産出:海賊と報復の民族誌から[床呂郁哉] Keywords:集団形成,海賊,報復,暴力Iと暴力II,暴力の遠心性と求心性 1●暴力と集団 2●スールーにおける暴力の民族誌(その):海賊 3●スールーにおける暴力の民族誌(その):報復 4●暴力と集団のオートポイエーシス 7章 徒党を組む:牧畜民のレイディングと「共同の実践」[河合香吏] Keywords:東アフリカ牧畜民,レイディング,交易,興奮,社会共同性 1●はじめに 2●「好戦的な牧畜民」像 3●レイディング・プログラム 4●レイディングにおける「共同の実践」 5●おわりに Article 2 昨日の友は今日の敵:パプアニューギニア・フリの社会[梅崎昌裕] Keywords:集団の流動性,争い,サポート,人口移動,都市住民 第3部 「われわれ」意識の生成と展開 8章 「今ここの集団」から「はるかな集団」まで:狩猟採集民のバンド[寺嶋秀明] Keywords:バンド,狩猟採集民,絆,ネットワーク,自立 1●はじめに 2●バンドのモデル 3●バンドの実態:「今ここの集団」から「はるかな集団」まで 4●バンドを生きる人びと:絆と自立 9章 感知される「まとまり」:可視的な「集団」と不可視の「範疇」の間[曽我 亨] Keywords:行為の同調,一時的な集団,感知される「まとまり」,「まとまり」の表象,文化範疇 1●はじめに 2●集団の可視性 3●同調する行為によって生成される一時的な集団 4●集団の重なりによって感知される「まとまり」 5●文化範疇と「まとまり」の相克 6●おわりに 10章 「われらベンバ」の小さな村:居住集団の日常と王国をつなぐしかけ[杉山祐子] Keywords:居住集団,王国,炉帯組,離散と集合のサイクル,参照する位相 1●はじめに 2●ベンバ王国と村の構成 3●さまざまな「集い」と相互交渉の蓄積がつくる村の輪郭 4●離散と集合:村の発展サイクルと権威 5●「参照する位相」の複層化 6●おわりに Article 3 ケニア・ルオという「集団」:社会人類学からの点描[椎野若菜] Keywords:ケニア・ルオ,植民地化,意識的な集団化,政治的闘争,アイデンティティ 第4部 新たな集団論へ 11章 集団的興奮と原始的戦争:平等原則とは何ものか?[黒田末寿] Keywords:チンパンジー属,対等性,平等原則,集団的興奮,原始的戦争 1●はじめに 2●集団現象と興奮 3●平等原則と闘争と興奮 4●一体化を求める興奮性動物 12章 エイジェントは誘惑する:社会・集団をめぐる闘争モデル批判の試み[田中雅一] Keywords:エイジェンシー,ネットワーク,代理,暴力,エロス 1●はじめに 2●闘争モデル:ジラール,今村,クラストル 3●ネットワークと関わり合い:対人関係の概念化 4●代理性:エイジェントとネットワーク 5●誘惑:エイジェントとエイジェントの相互作用 6●肉の共同体:メルロ=ポンティとともに 7●おわりに 13章 人間集団のゼロ水準:集団が消失する水準から探る,関係の意味,場と構造[船曳建夫] Keywords:場,場面,意味,高さ,構造 1●はじめに 2●人間関係の場と構造 3●人間集団が消失する水準 4●意味の場と,高さと構造 終章 「集団」から「制度」へ:まとめと展望[河合香吏,黒田末寿,北村光二,内堀基光] 1●Social集団の非構造性をあぶり出す:霊長類学領域から 2●「表象」を手がかりにした「活動の集合化」:生態人類学領域から 3●象徴化能力と制度による束ねへ:社会文化人類学領域から 今村仁司先生の遺したもの[西井凉子] あとがき[河合香吏] 索 引
生身の身体を伴った,生活する人間を,同じく,生活する人間が理解するとはどういうことか? フィールドワークの「原点」へ。 生身の身体を伴った,生活する人間を,同じく,生活する人間が理解するとはどういうことか? 地域社会を這いずり回る4人の研究者が,乳幼児期の食(共食の体験),青年期の労働(沖縄のヤンキー),成人期の政治行動(市町村合併),老年期の社会関係(孤独・孤立)をとおして考える。フィールドワークの「原点」へ。 ■主な目次 第1章 乳幼児期の食をとおして考える〈生活-文脈〉理解――〈生活-文脈〉とは何かについて 【宮内 洋】 第2章 青年期の労働をとおして考える〈生活-文脈〉理解――沖縄のヤンキーのフィールドワークから 【打越正行】 第3章 成人期の政治行動をとおして考える〈生活-文脈〉理解――市町村合併の事例から 【新藤 慶】 第4章 老年期の孤独・孤立をとおして考える〈生活-文脈〉理解――高齢者の「文脈」なき「生活」理解を超えて 【松宮 朝】 終 章 〈生活-文脈〉理解の視点から永山則夫の「転職」を再考する 【宮内 洋】 まえがき 第1章 乳幼児期の食をとおして考える〈生活-文脈〉理解――〈生活-文脈〉とは何かについて 1.はじめに:ヒトの発達における環境について「狼に育てられた子」から考える 2.食をとおしてみる人間の発達 3.〈生活― 文脈〉とは何か 4.まとめにかえて:なぜいま〈生活― 文脈〉理解が必要となるのか 第2章 青年期の労働をとおして考える〈生活-文脈〉理解――沖縄のヤンキーのフィールドワークから 1.『ヤンキーと地元』で書いたこと 2.戦い方から現実に迫る 3.沖縄の建設業を生きる 4.沖縄のヤンキーの〈生活― 文脈〉理解:長きにわたって奪いつづける関係をもとに 【第2章 補論】 脇の甘いフィールドワーカーがフィールドに巻き込まれた軌跡 1.パシリ気質の父親 2.脇の甘いフィールドワーカー 3.〈生活― 文脈〉理解と、観察者の変化 4.時間をかけて馴染ませる 第3章 成人期の政治行動をとおして考える〈生活-文脈〉理解――市町村合併の事例から 1.はじめに:市町村合併論議と住民の〈生活-文脈〉 2.住民の生活圏と「村の精神」という文脈:鈴木榮太郎の議論 3.農民の日常生活と「生活組織」という文脈:有賀喜左衛門の議論 4.群馬県旧富士見村における市町村合併問題 5.群馬県旧榛名町における市町村合併問題 6.政治グループにみる地域社会における政治行動と〈生活―文脈〉理解 第4章 老年期の孤独・孤立をとおして考える〈生活-文脈〉理解――高齢者の「文脈」なき「生活」理解を超えて 1.はじめに:鎌をめぐる出来事から 2.高齢者の「孤独」・「孤立」をめぐって 3.「文脈」なき「生活モデル」? 4.高齢者の〈生活― 文脈〉理解から 5.さらなる〈生活― 文脈〉理解に基づく福祉実践へ 6.おわりに:「文脈」をふまえた「生活」理解 終 章 〈生活-文脈〉理解の視点から永山則夫の「転職」を再考する 1.はじめに:永山則夫と二冊の本 2.永山則夫の転職 3.永山則夫と虐待 4.トラウマによる〈逃走〉の可能性 5.おわりに:見る人自身の〈生活― 文脈〉 あとがき
本来は森林の樹上生活者である霊長類の中で異彩を放つ存在,パタスモンキー.サバンナを時速55kmで駆け抜ける.ライオンなど多くの捕食者が蠢くサバンナへの適応だとされる.本書ではこのほかさまざまな側面で見られる彼らの適応現象について,やはりサバンナでその異彩を開花させたわれわれ人類の進化も考えながら紹介していく。 はじめに 1 執筆の動機 2 本書の概要 第1章 わが憧れの地、アフリカのサバンナへ 1 遠かった研究者への道 2 まだまだ遠かったアフリカ 3 サバンナに向けての出発準備その一—商業港湾都市ドアラにて 4 サバンナに向けての出発準備その二—首都ヤウンデにて 5 遠かったサバンナ 第2章 調査地カラマルエ国立公園 1 位置 2 気候 3 植生 4 動物相 第3章 比較採食生態学的研究 1 比較採食生態学とは 2 パタスの採食生態学的研究小史 3 予備調査 4 どこで食べ、どこで眠るのか(一)—遊動域が広いパタスと狭いタンタルス 5 どこで食べ、どこで眠るのか(二)—主要食物、水、そして泊まり木の影響 6 どこで食べ、どこで眠るのか(三)—捕食者の影響 7 どの種が何を食べるのか(一)—豆やガムや昆虫を好むパタスと種子や葉や花を好むタンタルス 8 どの種が何を食べるのか(二)—タンタルスに比べ高質の食物を選択利用するパタス 9 パタスの食性はジャーマン・ベル原理の反証か 10 人類学への適用—パタスとホモの類似性 11 どの季節に出産するのか—乾季中期に出産するパタス 12 パタスの種分化—時間的生殖隔離により急速に進んだ種分化 13 どちらの性が何を食べるのか(一)—妊娠・授乳のために蛋白質に富む食物を好む雌 14 どちらの性が食べる時間が長いのか—交尾季に採食時間が短くなる雄 15 どちらの性が何を食べるのか(二)—時間不足を補うため速く食べられる食物を好む雄 第4章 繁殖生態学的研究 1 繁殖生態学とは 2 いつ出産するのか—日中に出産するパタス 3 何歳で産み始め、何年おきに産むのか—出産率の高いパタス 4 頻繁な乳母行動の説明原理—誰が育児するのか 5 音声再生実験—アカンボウの声に無差別に強く反応する雌たち 6 特殊な観察事例—他群のアカンボウさらいと乳母行動、そして遺棄 7 頻繁な乳母行動の説明原理再考 第5章 社会生態学的研究 1 社会生態学とは 2 ヴァン・シャイックの社会生態学モデル 3 パタスの社会学的研究小史 4 誰と親和的行動を交わすのか—野生群では順位と血縁は親和的行動に影響を及ぼすのか 5 どのように敵対的交渉を交わすのか—野生群は平等的か、それとも専制的か 6 カラマルエの野生群はなぜ専制的か おわりに 引用文献
サルの食べる速さにこだわって研究を進めてきた筆者の研究を中心に,食べる速さにより何が明らかになるか,サルにとって食べる速さがいかに重要な意味を持つのかについて論じる.その際,対象種やテーマ選びの過程が分かり,ヒトの食にも触れることにより,生態学を志す読者や一般読者の参考となるよう配慮している. はじめに 第一章 さまざまな出会い 1 対象種・ニホンザルとの出会い 2 専門分野・採食生態学との出会い 3 調査地・金華山との出会い 4 採食速度との出会い 第二章 生息環境の質を表す尺度としての採食速度 1 ブナの実を拾う速度で生息環境の質を表す 2 カヤの実を拾う速度で生息環境の質を表す 第三章 食物パッチの質を表す尺度としての採食速度 1 チャーノフの限界値の定理 2 ブナを用いた限界値の定理の検証 3 限界値定理の検証へ再挑戦 4 そのほかの限界値の定理の検証研究 5 食物パッチ選択 第四章 食物の質を表す尺度としての採食速度 1 栄養含有量からみた食物の質 2 栄養摂取速度からみた食物の質 3 最適食物選択モデル——古典モデルから修正モデルへ 4 最適食物選択モデル——古典モデルへの回帰 第五章 食物摂取量を推定する尺度としての採食速度 1 食物摂取量の推定に用いる採食速度 2 食物摂取量を推定する尺度としての採食速度 3 栄養不足の要因を探る尺度としての採食速度 第六章 採食速度の個体差 1 体の大きさによる違い 2 順位による違い 第七章 社会に影響を及ぼす採食速度 おわりに 読書案内 引用文献 索 引
当たり前の日常が、視点を変えると全く別の世界になる―。 気鋭の人類学者による、世界の見方を変える「手引き」書。 西日本新聞で2020~2022年に連載した「人類学者のレンズ」、朝日新聞で2018年に連載した「松村圭一郎のフィールド手帳」を加筆・修正、再編集して書籍化。 「うしろめたさの人類学」などで知られる筆者は、コロナ禍やオリンピック、地震、水害、戦争などの社会、時事問題が噴出する「現在」に立脚しつつ、人類学の先行研究、原点であるエチオピアの人類学調査、古里の熊本での思い出をたどっていく。 人類学者のさまざまな眼を通じて、「危機」の時代を読み解き、揺れる「今」を生きるヒントを考える。 レヴィ=ストロース、ルース・ベネディクト、デヴィッド・グレーバー、ティム・インゴルド、岩田慶治、猪瀬浩平、磯野真穂など、国内外の人類学者の論考が登場。人類学という学問と現実をつないでいく試み。 西日本新聞連載時と同様に福岡出身の写真家、喜多村みかとコラボ。ポートレートでありながら、抽象性を合わせ持つ喜多村の写真は、文章の余白や解釈の幅を広げる。
ニホンザル研究の最前線——生態学,行動学,認知科学など,多様な分野の気鋭の研究者が執筆.伝統的な日本の霊長類研究の歴史をふまえて,これからのニホンザル研究を展望し,新しい野生動物学の地平を拓く.野生動物の研究や保護管理に携わる人たちの必読書. 序 章 日本の哺乳類学とニホンザル研究の過去から現在(中川尚史) 第I部 ニホンザル研究の再考 第1章 食性と食物選択(澤田晶子) 第2章 毛づくろいの行動学(上野将敬) 第3章 亜成獣期の存在に着目した社会行動の発達(勝 野吏子) 第4章 行動の伝播,伝承,変容と文化的地域変異(中川尚史) 第5章 オスの生活史ならびに社会構造の共通性と多様性(川添達朗) 第II部 ニホンザル研究の新展開 第6章 中立的・機能的遺伝子の多様性(鈴木-橋戸南美) 第7章 四足歩行や二足歩行による身体の移動(日暮泰男) 第8章 コミュニケーションと認知(香田啓貴) 第9章 群れの維持メカニズム(西川真理) 第10章 寄生虫との関わり(座馬耕一郎) 第11章 他種との関係(辻 大和) 第III部 人間生活とニホンザル 第12章 動物園の現状と課題(青木孝平) 第13章 共存をめぐる現実と未来(江成広斗) 第14章 福島第一原発災害による放射能汚染問題(羽山伸一) 終 章 これからのニホンザル研究(辻 大和) あとがき(辻 大和・中川尚史) Monkeys of Japan: A Mammalogical Studies of Japanese Macaques Yamato TSUJI and Naofumi NAKAGAWA, Editors
人類とビーズ 人類最古のビーズ利用とホモ・サピエンス 新石器時代のストーンビーズ 縄文時代の装身具 先史琉球の貝ビーズ文化 古代日本とユーラシア インダス文明のカーネリアン・ロード 弥生・古墳時代の多様なビーズ 古代エジプトの社会をつなぐビーズ 中国文明の宗教芸術に見るビーズ アフリカに渡ったガラスビーズ アイヌと北方先住民を結ぶガラスビーズ オセアニアのガラスビーズがきた道 オセアニアの貝ビーズ文化 東アフリカ牧畜社会の若者文化 台湾原住民族の文化の多様性 現代アイヌのタマサイ タイの若者文化と土製ビーズ 日本で華開くビーズ文化
野生動物の生態調査の基礎は直接観察法であり,その起源は日本の霊長類学にある.かつては「職人芸」とされたその方法について,ニホンザルをはじめニホンジカやニホンカモシカなど日本に生息する哺乳類の豊富な事例を交えて,野生動物について学ぶ人たちにわかりやすく解説する. はじめに 第1部 方法編 第1章 研究計画法 1 研究のプロセス概観/2 テーマ設定、研究計画の立て方 第2章 データ収集法 1 データ収集の前に/2 行動の定義・記述方法などの諸注意/3 データ収集法 第3章 データ解析法 1 データ入力/2 データ分析/3 成果発表 第2部 実践編 第4章 生態 1 行動圏、縄張り、土地利用/2 行動の時間配分と行動カテゴリー/3 採食 第5章 社会 1 地域個体群構成/2 群れサイズ、構成、移出入、空間配置/3 社会行動/4 社会関係 第6章 繁殖 1 求愛・交尾/2 出産、育児、および子供の発達 第7章 異種間関係 1 種間競争関係と捕食・被食関係/2 花粉分散と種子散布/3 異種混群 おわりに さらに学びたい人へ/引用文献/索引
科学は、レイシズムを肯定しない 人種に関わる正しい知識から、 レイシストに「NO」を突きつけよう アジア人は生まれつき数学が得意、黒人は身体能力が高い、ユダヤ人は金儲けがうまい…… 人間の進化と多様性をめぐる議論が活発化している現代において、いまだに世の中には「誉め言葉の皮をかぶった」偏見であふれています。 そして、そうした一見科学的に見える偏見は人種に関するステレオタイプを強化し、人種に優劣を見出す、人種差別の温床にもなっています。レイシストは家系図や遺伝子検査をもとに自らの純血さを誇ってみたり、知能のに優れた人種があるというデータから自らの優位性を高めたり、特定の病気と人種を結びつけたりすることで他の人種は劣ったものだとみなしているのです。 しかし、それは科学的に正しい考え方ではありません。 レイシストは間違ったデータを利用し、疑似科学を用い、差別は科学的に肯定されるとでたらめを言っているのです。 本書では、固定観念や思い込みによって間違いがちな4つの分野(肌の色、純血性、スポーツ、知能)について、科学的な立場から差別や偏見を否定します。 遺伝学が個々の人間の違いについて解明できていること、断定できないことをそれぞれ明らかにすることで、時代遅れの人種に関する観念を力強く解体していくのです。 無邪気なステレオタイプから、より悪意に満ちた言説まで、正しい科学と歴史的な知識に裏付けられた「レイシストの論理をぶち破る」ための方法を、丁寧に解説した1冊です。 はじめに ペーパーバック版に寄せて 本書の表現について 第1章 「色分け」に潜むリスク 「色」で分けられる人びと 「人種」という発明品 遺伝学の誕生 遺伝学は人種をどう見ているのか 第2章 あなたの祖先は私の祖先 祖先はあいまいなもの 私たちは祖先を共有している アフリカの途方もない複雑さ イギリスにおける人種 不確かなルーツ 遺伝子に「国」は刻まれない レイシストは遺伝学を悪用する 第3章 黒人アスリートは強い? 身体能力は人種の問題なのか 奴隷制が生み出した偏見 「強い」遺伝子はあるのか 文化というファクター 複雑さを受け入れる 根深く無自覚な偏見 第4章 知能は遺伝か 人種差別主義者、ジェームズ・ワトソン IQは変わる それでも知能は遺伝する? ユダヤ人は賢いのか 文化を見誤ってはならない 終章 結論とまとめ 謝辞 訳者あとがき 参考文献
民族音楽学の入門書。専門的な音楽の経験がなくても、音楽への知的な好奇心がある人に向けて編まれた。コラムも読み応え充分。 「民族音楽学」は世界の多様な音楽文化を扱いながら、人間と音楽について考える学問。本書はこの民族音楽学の入門書。専門的な音楽の経験がなくても、音楽への知的な好奇心がある人に向けて編まれた。「民族」という語がついてはいるものの、民族音楽学は遠い異国の音楽だけを扱うものではなく、あらゆる音楽を扱う。本書は地域別・ジャンル別ではなく、むしろ複数の音楽文化を横断的に捉えられるような以下の視点を提示する。第一部「響きと身体」では身体、舞踊、書記性(楽譜)、言葉。第二部「伝承と政策」では、個人にとっての伝承、国家の政策、ユネスコ等の国際機関の関与。第三部「社会の中の音楽」ではマイノリティ、越境、アイデンティティ構築、知的所有権。最後に、「民族音楽学」という学問の現在までを示す。「リズム」「舞踊研究」「音組織」「採譜と分析」「資料としての楽器」「フィールドワーク」「映像」の7つのコラムも読みごたえがある。 はじめに 増野亜子 響きと身体 1 音楽と身体 増野亜子 コラム1 リズム 寺田吉孝 2 音楽と舞踊 金光真理子 コラム2 舞踊の記譜と分析法 金光真理子 3 聴こえるものと見えるもの 谷正人 コラム3 音組織(音階) 谷正人 4 音・声・ことば 梶丸岳 伝承と政策 5 伝統芸能の伝承――個人にとっての芸の伝承 小塩さとみ コラム4 楽譜・採譜・分析 小塩さとみ 6 無形文化遺産としての音楽 福岡正太 コラム5 資料としての楽器 福岡正太 7 無形文化財と韓国の伝統音楽 植村幸生 社会の中の音楽 8 マイノリティ 寺田吉孝 コラム6 映像記録と録音 藤岡幹嗣 9 越境・ディアスポラ 早稲田みな子 コラム7 フィールドワーク 梶丸岳 10 ローカルとグローバル、アイデンティティ 髙松晃子 11 グローバル化と著作権問題 塚田健一 総括 12 民族音楽学への流れ 徳丸吉彦 引用・参考文献 索引 あとがき 増野亜子、徳丸吉彦
「経済人類学」の入門書、本邦初の初学者向けテキスト。 読書猿(ベストセラー『独学大全』著者)座右の書 熱烈推薦! 「経済(エコノミー)についての知を総覧する試み」 「薄いんだけど、ネタ満載 めちゃくちゃ網羅的に暴れている(笑) この本だけでご飯が何杯も食べられます!!」 内容はまず、「経済(エコノミー)とは何ぞや」から始まるんですが、僕たちがいわゆる経済学として考えるような狭い領域の話ではなくて、それこそ人類学者は出てくるし、社会学者も出てくるし……。具体的に「エコノミーのうち、経済学はここは扱っているけど、ここは扱ってない」という話をしている本なんです――読書猿「ダイヤモンド・オンライン」2022年12月3日 「経済人類学」の入門書、本邦初の初学者向けテキスト。 【本書の特徴】 ・トピックごとに、その理論的なエッセンスを紹介していくというスタイルで記述。 ・トピックに関連する重要なテキストを取り上げて、要点を3つに分けて解説。 ・図表を多用し、視覚的な分かりやすさにも配慮。 経済人類学(economic anthropology)とは? 市場経済、自然環境と経済活動、農村や狩猟採集社会の在り方、さらに贈与交換といった非市場型の経済システムなど、人間の経済の全般をフィールドワークなどの人類学的な手法を用いて研究する学問である。特に、経済史家カール・ポラニーの問題意識から影響を受けて発展してきた。近年、地球環境問題に対する関心の高まりを背景に、持続可能な経済システムなどを考えるうえでも重要な分野として、再び世界的に注目を浴びている。
マルコ・ポーロの日本についての言及以降、ヨーロッパ人の東アジアへの旅行の機会が増し、その存在を知覚によって認識するようになる。その後の400年間、人種という概念がいかに形成され、日本人の捉え方がどう変化していったか、その過程を膨大な資史料から解明する。 日本の読者へのメッセージ 謝辞 著者の言葉 序 人種と人種論議――基本定義 啓蒙時代以前の人種――論議とその要素そして展開 ステージⅠ――最初の出会い ステージⅡ――地域の情報 ステージⅢ――長期の出会いと地域情報の拡大 ステージⅣ――グローバルな情報と集大成 集団の地位に関する近世の決定要素 本書の目標 第一局面 推測段階――出会い以前の日本に関する知識(一三〇〇年-一五四三年) 第一章 ジパングの浮上とその先駆的民族誌 肌の色の中世的意義とポーロの見解 第二章 大航海時代の幕開けと“ジパング” カリブ海のジパング――コロンブスの妄想 マラッカに来る謎のゴーレス 総括――推測段階における“人種” 第二局面 観察――初期の出会いと論議の始まり(一五四三年-一六四〇年) 第三章 日本人に関する初期の観察 動き始めた論議――近世初期日本に関する人種知識の生産者たち 日本人とは何者か――初期の特徴描写 日本人の身体検査とその全体像 日本人の起源と民族的類縁性――予備的推論 第四章 当代のヒエラルキーにおける日本人の位置 尺度としての力 測定基準としての技術及び文化の達成度 包括的民族階層化の登場 アコスタの階層論 ヴァリニャーノの階層論 リンスホーテンの階層論 集団の属性論 第五章 新人類秩序の鏡像 政治的軍事的ヒエラルキー――奴隷と傭兵 社会的文化的ヒエラルキー――先住民との性交渉と結婚 精神の階層――イエズス会の会士資格 力とヒエラルキー――日本人対中国人 第六章 観察局面期の“人種”とその認識上の限界 近世の観察者に見る認識上の限界 可視域を無視し不可視域を見る 総括――観察段階の“人種” 第三局面 再検討――議論の到達点(一六四〇年-一七三五年) 第七章 日本人の体型と起源に関するオランダの再評価 身体への転換――初期の徴候 日本人の起源に関する再検討 第八章 力、地位そして世界秩序における日本人の位置 オランダの力とアジアにおけるその限界 日本人の力とオランダに対するその影響 世界及びアジアのヒエラルキーと日本の位置 第九章 新しい分類学を求めて――植物、医術そして日本人 植物学、医学そして科学的思考の高まり 包括的人間分類法の誕生と日本人 人種マーカーとしての黄色い肌の登場 第一〇章 “人種”と「再検討段階」における認識上の限界 視覚的想像の限界 当代ペテン師の教訓 要約――「再検討段階」における“人種” むすび――近世ヨーロッパにおける人種論議と日本人のケース 近世人種論議のメカニズム 近世ヨーロッパにおける人種の本質 ローカルからグローバルへ――近世人種論議に対する日本の寄与 “ヨーロッパ”の概念形成と人種に対するそのインパクト 人種とヨーロッパ例外主義の問題 まとめそしてプロローグ 訳者あとがき 図の掲載書名と出典 注 参考文献 索引
文化人類学における「人格」. ヴァヌアツ・アネイチュム島. 一八四八. 村落の誕生. 持続と断絶. 恥辱と歴史認識. 譲渡できないものを贈与する. 名の示すもの. 人格の手前にあるもの. 死と状況的人格. 共在する人格 文化人類学における「人格」 ヴァヌアツ・アネイチュム島 一八四八 村落の誕生 持続と断絶 恥辱と歴史認識 譲渡できないものを贈与する 名の示すもの 人格の手前にあるもの 死と状況的人格 共在する人格
医学・地理学・社会学・人口学などさまざまな分野と関連し,環境問題や人口問題,健康問題などの理解に基本的な知見を提供する人類生態学.その入門書として定評のあるテキストの待望の改訂版.この10年間に起きた変化を取り込み,最新の内容にアップデートする. 序章 I 生態系のなかの人間 第1章 生態系と人類の特性 第2章 人類の起源と進化 第3章 生存様式の変化と多様化 第4章 生業と社会 II 人間の生存と健康 第5章 身体とその機能 第6章 行動の生態学 第7章 栄養と健康 第8章 病気の生態学 III 人口からみた人間 第9章 長期的な人口変化 第10章 人口指標と集団の適応 第11章 現代の人口問題 IV 環境問題と人間 第12章 エネルギーと資源 第13章 ライフスタイルと環境 第14章 人為的環境の健康影響 第15章 地球環境問題と人類
いわゆる「アフリカ的停滞」は,本当に「停滞」なのか? アフリカの自然,社会特性を緻密かつ大規模なフィールドワークからあぶり出し,その特性—最小生計努力と平準化傾向—を生かした「アフリカ的発展」「アフリカ型農村開発」を目指す,地域研究からの開発アプローチ.グローバル資本主義に対する,地域からの,実践的・学問的な反撃. 口 絵 巻頭地図 序 章 アフリカ的発展とアフリカ型農村開発への視点とアプローチ[掛谷 誠] 1 農村開発に挑む 2 トングウェの生計経済 3 変容するベンバの生活 4 エキステンシブな生活様式と内的フロンティア世界 5 「情の経済」と「モラル・エコノミー」 6 アフリカ的な集約化と地域発展 7 マテンゴ高地における開発実践 8 アフリカ型農村開発へのアプローチ 第1部 多様な地域発展—7ヵ村の事例研究 第1章 「ごみ捨て場」と呼ばれる畑 [樋口浩和・山根裕子・伊谷樹一] −−ウルグル山東斜面の事例 1 ウルグル山と商品作物 2 タンザニア独立後の政策の動向と村の生活 3 多様な生態環境 4 ごみ捨て場ジャララの役割 5 2つのジャララ 6 2種類の商品作物 7 慣習的な土地保有制度 8 慣習的な土地保有制度と永年作物栽培の普及 9 土地問題とジャララ 第2章 農村の発展と相互扶助システム [近藤 史] −−タンザニア南部ンジョンベ高原のキファニャ村の事例から 1 互助労働と地域発展 2 地域の概要 3 ベナの農業 4 農業の改良を支える互助労働 5 農業の集約化と内発的発展 第3章 氾濫原の土地利用をめぐる民族の対立と協調 [加藤 太] −−キロンベロ谷の事例 1 注目を集める湿地・氾濫原の利用 2 調査地の概要 3 キロンベロ谷の生態環境 4 稲作の特徴と変遷 5 土地利用の変遷と民族間関係 6 氾濫原におけるポゴロとスクマの住み分け・対立・協調 第4章 タンザニア・ボジ県の農村 [山本佳奈・伊谷樹一・下村理恵] 1 湿地開発をめぐる住民の対立と折り合い 2 ミオンボ林の利用と保全 3 水田稲作の発展プロセスにおける先駆者の役割 第5章 ザンビア・ベンバの農村 [杉山祐子・大山修一] 1 「ベンバ的イノベーション」に関する考察 2 ザンビアにおける新土地法の制定とベンバ農村の困窮化 第2部 農村開発の実践 第6章 タンザニア・マテンゴ高地 [伊谷樹一・黒崎龍悟・荒木美奈子・田村賢治] 1 ムビンガ県マテンゴ高地の地域特性とJICAプロジェクトの展開 2 「ゆるやかな共」の創出と内発的発展 3 住民の連帯性の活性化 4 マテンゴ高地における持続可能な地域開発の試み 第7章 タンザニア・ボジ県ウソチェ村 [神田靖範・伊谷樹一・掛谷 誠] 1 半乾燥地における水田稲作の浸透プロセスと民族の共生 2 ウソチェ村における農村開発の構想と実践 第8章 タンザニアにおける農村開発活動の実践についての一考察 [勝俣昌也] −−日本における農業研究成果の生産現場への普及と比較して 1 研究成果と実践 2 SUAメソッドと日本における生産現場への普及の比較 3 タンザニアにおける実践活動の一構図 4 日本における農業研究成果の生産現場への普及の一構図 5 「内と外をつなぐ者」の存在 終 章 アフリカ型農村開発の諸相 [掛谷 誠・伊谷樹一] −−地域研究と開発実践の架橋 1 地域発展の諸特性 2 アフリカ農村の開発実践をめぐる諸特性 あとがき 索 引
音楽にはヒト、モノ、空間を結びつける力がある。この動態とプロセスを、人類学者や作曲家らが協力して描く、新たな音楽の民族誌。 世界各所で音楽や芸能に向き合ってきた人類学者、音楽教育の実践者や作曲家らが、「音が生み出される場」の豊かな描出を通じて、「音楽の力とは何なのか」という問いに言葉を与えようと模索する、新たな音楽の民族誌。 「音楽」は、一つの楽曲を意味する言葉にとどまらないだろう。 「音楽」には、作品そのものに本来備わる特質・構造・意味/メッセージだけでなく、それがあらゆるアクター(表現者・オーディエンス・空間や環境・音楽プレイヤーや音響機材・人間の身体/心情や音をめぐるコンテクストなど)をつなぎ合わせ、一つの塊のように統合させようとする力があるからだ。 本書では、このようにさまざまなものを編み込んでいく音楽の力(=サウンド・アッサンブラージュ)を包括的に表現し、「音楽」の持つ意味を大きく拡張していく。 世界各所で音楽や芸能に向き合ってきた人類学者、音楽教育の実践者や作曲家らが、「音が生み出される場」の豊かな描出を通じて、「音楽の力とは何か」という問いに言葉を与えようと模索する、新たな音楽の民族誌。 〈序章〉「音楽の力」を取り戻すための試論 小西公大 第1部 つながる(媒介) 〈第一章〉音が編み込む力 —インド・タール沙漠の芸能世界が教えてくれたこと 小西公大 〈第二章〉「見せる場」から「音楽とともにいる場」へ —ウガンダの学校と盛り場で 大門碧 〈第三章〉音を継ぎ合わせる「視線」 —インドの歌舞踊ラーワニーの舞台実践から 飯田玲子 第2部 うみだす(創造) 〈第四章〉醸される島の音の力 —三宅の声と太鼓が生み出すアッサンブラージュ 小林史子 〈第五章〉つながりを手繰り寄せる/選り分ける —社会的存在としてのチベタン・ポップ 山本達也 〈第六章〉調を外れて響き合うトーンチャイム —サウンド・アッサンブラージュの授業風景 石上則子 第3部 つたえる(継承) 〈第七章〉制度と情動をめぐる相剋 —東北タイのモーラム芸能にみる暴力・性・死 平田晶子 〈第八章〉一切をつむぎ、交感するアッサンブラージュの力 —高知におけるガムランプロジェクトの実践を通して 宮内康乃 〈第九章〉媒介、愛着、継承 —ソロモン諸島アレアレにおける在来楽器アウをめぐって 佐本英規 〈補論〉 仮想空間で音楽になること 小西公大 おわりに
原始的人間とは何か 食から見たサルと類人猿の進化 類人猿との分岐点 類人猿と人類はどれほど近いか 森林と狩猟生活はヒトに何をもたらしたか 道具と文化 心を読むこと、他者を操作すること 性の進化 ヒトの社会性とは何か
人類学の理論と民族誌の世界への絶好の入門テキスト。定評ある旧版(累計3刷)に、原書第3版の増補部分を大幅追加して新たに刊行! 人類学の最新成果を盛り込みつつ、日本の民族誌的事例も豊富に取り上げた絶好の入門書。定評ある旧版(累計3刷)に、原書第3版の増補部分を大幅追加して刊行! 人類学の理論と民族誌をバランスよく配置し、独学でも人類学の世界に飛び込める絶好の入門書。定評ある旧版(2002年刊行・累計3刷)に、原書第3版(2016年刊)の増補部分を大幅追加して新たに刊行! イギリス人類学の最新成果とともに、昨今の観光やフィールドワークの問題を盛り込み、異文化としての日本の民族誌的事例も豊富に取り上げた本書からは、「いまなぜ人類学が必要か」が明確に見えてくる。 序 日本語版への序 増補新版まえがき 凡 例 序 章 新たな出会い 社会人類学者の仕事 社会人類学の歴史 社会人類学の現代的意義 第1章 世界を見る おみやげとハンカチ 分類の学習 生・死・生き埋め 文化相対主義と人類学者のバイアス 分類法の変化──ジェンダーの問題 第2章 嫌悪・禁断・絶句 観察領域 タブー 穢 れ 清浄と分類 動物の範疇と言葉の乱用 第3章 贈答・交換・互酬性 人類学者の到着 贈 答 インド人の贈り物 交 換 互酬性 不可譲なモノ・もつれたモノ・包まれたモノ 第4章 儀 礼 靴と空虚な儀礼 儀礼の定義 通過儀礼 第5章 象徴体系としての社会 象徴とは何か 身体の象徴 関係の象徴化 集団的象徴とその解釈 シンボリズムの人類学的解釈 第6章 美と賜物,宝と戦利品 鑑賞と価値 生きた芸術 「世界を見る」窓口としての芸術 芸術と社会的地位 芸術と意味 審美性 芸術の定義 第7章 宇宙論Ⅰ──宗教・呪術・神話 宗教・科学・宇宙論 定義と区分 宗教の起源 宗教現象の説明 カルト──根強い宗教運動 第8章 宇宙論Ⅱ──妖術・シャーマニズム・シンクレティズム 宇宙論に見る固有の範疇 用語について 妖術信仰と邪術信仰の役割 エヴァンズ=プリチャードへの反論と異論 憑依とシャーマニズム シンクレティズム 第9章 法律・秩序・社会統制 規則と規範 制裁(サンクション) 秩序と紛争 競合的規範と社会統制の文脈 第10章 政治の技法 政治の可能性 政治制度の類型 政治権力と地位の獲得 第11章 家族・親族・結婚 親族の多様性 親族関係の分類 単系出自集団 多文化社会における親族──事例研究 結 婚 第12章 経済と環境 結論に向けて 生業と生存 財産と土地保有 市場経済 環境の社会観 環境が社会生活に及ぼす影響 結 語 第13章 「つながりあった世界」のアイデンティティ ──観光・トランスナショナリズム・グローバリゼーション はじめに 娯楽としての文化的差異 旅と観光の研究 エコツーリズムと聖地 パフォーマンス・アイデンティティ・オーセンティシティ 国境を越えたつながり グローバル化するビジネス・モノ・思想 アイデンティティの選択? おわりに 第14章 現代世界と人類学 はじめに フィールドワークとその効用 グローバルな文脈における研究──「グローボグラフィ」 世界はなぜ人類学者を必要としているか おわりに 補 遺 一人称の語り ハウについて──寛大性と贈答の霊性(マヌカ・ヘナレ) イニシエーション儀礼について(レシカール・オレ・ンギラ) 同性婚カップルの子育てについて(メアリー・マーサ・ビートン) 空間──場──場所と聖性について(ラアラ・フィッズノア) 国境を越えたアイデンティティについて(ウォング・シ・ラム) 映像誌 訳者あとがき 索 引 世界地図(本書で言及した民族と場所)
異なる社会・文化的集団の接触や人の越境は,新たな技術を創出する。資源を巡る対立はしばしば紛争の原因となるが,こうした革新は新たな利用の道を開き,それが日常のマンパワーを基盤とするかぎり,利用/再生の均衡は保たれる。多様な技術や価値観の混合によって自然資源の共有を図る人々の営みに,平和的・持続的な社会の形を見る。 【推薦】嘉田由紀子氏(前 滋賀県知事,びわこ成蹊スポーツ大学 学長) 1970年代,学生時代に女ひとりアフリカへ向かった私は,タンザニアの農村に暮らしていて,ここは何と安全で平和なんだろうと感銘を受けました。1990年代以降は毎年,マラウィ湖畔の村で住み込み調査をしました。アフリカでは紛争イメージが先行していますが,その暮らしの深部にせまれば,40年前に私の抱いた感慨が正しかったことを本書は教えてくれます。 序章 生態と生業の新たな関係 [伊谷樹一] 1 農村が抱える三つの課題 2 外部社会との接触 3 生業様式の変容 4 生態資源と生業 第1部 外部社会との接触 第1章 富者として農村に生きる牧畜民―タンザニア・ルクワ湖畔におけるスクマとワンダの共存 [泉 直亮] 1 移住を繰り返してきた牧畜民スクマと農村の経済格差 (一)牧畜に対する外部社会からの圧力/(二)消失しつつある「フロンティア」 (三)農村の富者としてのスクマ 2 ルクワ湖畔に移住したスクマと地元住民ワンダ (一)スクマの地理的・政治的な周辺性/(二)スクマ世帯とワンダ世帯の経済状況の比較 3 もめごとへの対応 (一)暴動にいたった事例/(二)食害事故への対応 4 スクマ―ワンダの関係構築 (一)二〇一三年はじめの食料不足/(二)救済を目的とした仕事の提供 5 地元住民と共存するために (一)居住場所を確保するための社会的繋がり/(二)富者として農村に生きる牧畜民 第2章 民族の対立と共存のプロセス―タンザニア・キロンベロ谷の事例 [加藤 太] 1 民族の移動 2 調査地域の概要と調査方法 3 地元民ポゴロと移住民スクマ 4 民族間の土地争い 5 関係の修復プロセス 6 自然保護政策への対応と民族関係 7 両民族をつなぐ接点 8 農牧民スクマの民族性について 第3章 コーラナッツがつなぐ森とサバンナの人びと―ガーナ・カカオ生産の裏側で [桐越仁美] 1 コーラナッツとカカオをめぐる人びとの動き 2 西アフリカに流通するコーラナッツ 3 調査地概要 4 コーラナッツとカカオの関係 5 長距離交易ネットワークとゾンゴの形成 6 コーラナッツ・ビジネスの構造 7 コーラナッツ・ビジネスを取り巻く信頼のネットワーク (一)採取者からのコーラナッツの買い付け/(二)商人とヤロの関係性 (三)シャゴ・システム 8 ガーナ南部への人口の流入と民族共生の可能性 第2部 生業構造の変容 第4章 農牧複合と土地争い―社会と技術の両アプローチを実践した対立の克服 [山本佳奈] 1 アフリカにおける農耕―牧畜の関係と土地の競合 2 ボジ高原の概要 3 農牧複合の実態 4 季節湿地の耕地化が引き起こした土地の競合 5 季節湿地をめぐる住民の争い (一)土地利用の折り合いにいたった事例/(二)湿地の畑を放牧地に戻した事例/ (三)土地争いを回避した事例 6 農地不足の克服へ向けた新たな動き 7 土地争いを収束させる農村社会 第5章 バナナを基盤とする農耕社会の柔軟性―ウガンダ中部、ガンダの事例から [佐藤靖明] 1 社会の柔軟性が生み出される背景 2 ガンダにおけるバナナ栽培と土地管理の特色 3 主食作物の選択にみられる柔軟性 4 生業活動にみられる分業から協働への変化 5 世帯間にみられるいさかいの増加と互助組織の誕生 6 農村社会の柔軟性がもたらす持続性 第6章 半乾燥地域の林業を支える火との付きあい方―タンザニア南部、ベナの農村の事例から [近藤 史] 1 林業の可能性 (一)「はげ山」の変貌/(二)タンザニアにおける森林の利用と保全 2 造林焼畑―利用するための林づくり (一)木を管理する/(二)食料生産の安定から林業の経済性重視へ 3 林業景気 (一)カネのなる木/(二)大規模林家の台頭 4 林を守る (一)野火の脅威/(二)火を制御する 5 平準化と経済格差 第7章 平準化機構の功罪―ザンビア・ベンバ社会のピースワーク [吉村友希・大山修一] 1 ピースワーク 2 ザンビアの農業政策とベンバの農耕 3 ベンバ農村の現在 4 村でおこなわれるピースワーク 5 ピースワークのもつ両義性 6 平準化機構がもたらす経済格差と農村内の共生のゆくえ 第3部 生態資源と生業 第8章 マルーラ酒が守るサバンナの農地林―ナミビア北部、オヴァンボ社会の事例 [藤岡悠一郎] 1 畑と林の共存景観、農地林 2 ナミビア半乾燥地域のオヴァンボ社会と生業形態 3 ナミビアの社会変動とマルーラ利用の変化 (一)伝統的権威と厳格なルール/(二)オヴァンボ社会と樹木利用の変化 4 マルーラ酒づくりの共同労働と酒の贈与 5 「共」を守る酒 第9章 多様性をうみだす潜在力―カメルーン東南部、熱帯雨林における焼畑を基盤とした農業実践 [四方 篝] 1 熱帯林における生物多様性の保全をめぐる議論 (一)ランド・スペアリングとランド・シェアリング/(二)焼畑へのまなざし 2 調査地域 (一)調査の対象/(二)カメルーン東部州の植生景観 3 焼畑がうみだす多様性 (一)バナナから読み解く焼畑システム/(二)焼畑が創り出す動的な生態系模様 4 「伐らない焼畑」がうみだす多様性 (一)カカオ・アグロフォレストリー (二)「伐らない焼畑」における自給作物栽培と商品作物栽培の両立 (三)「伐らない焼畑」における庇陰樹の多様性 5 焼畑の潜在力 第10章 水資源の活用と環境の再生―小型水力発電をめぐって [黒崎龍悟] 1 水利用の新しい動き 2 河川流域の利用と保全 3 対象地の概要 4 タンザニアの電力事情 5 ルデワ県における小型水力発電の動向 (一)簡単に入手できる素材や廃材の活用/(二)知識・技術の習得と実践者たちのネットワーク (三)資金/(四)自然地形を活用した発電/(五)発電規模と電気の用途 6 環境保全への展開 (一)エントリー・ポイント―乾季の流量の問題/(二)「ルママ小水力発電プロジェクト」の影響 (三)不満を募らせる村びとたち/(四)小型水力発電の役割 7 農村における自然環境とエネルギーのつながり (一)自然と人をつなぐ小型水力発電/(二)自然と人の距離 終章 争わないための作法―生業と生態をめぐる潜在力 [重田眞義] 1 常態としての平安―「潜在力」へ接近するために 2 三つのドグマ―アフリカの人と自然の関係に対する大きな誤解 3 ドグマの背景―どのようにアフリカは偏った見方にさらされているか 4 生業生態をめぐる対立と協調―集団間の平安 5 土地をめぐる生業経済の変動―集団内の平安 6 人と生態資源の新たな関係性 7 争わないための作法―生業における人と環境の相互関係 (一)平準化を志向して生み出される格差/(二)格差を超えて共生を求める 索引 執筆者紹介
世界を変えるための「最古の科学」が「儀式」だった! 火渡りの祭礼から卒業式まで、儀式の秘密と活用のヒントを探究する空前の書。 世界を変えるための「最古の科学」が「儀式」だった――。 生活や価値観が猛スピードで変化する現代。昔からある「儀式」は単調で、退屈で、無意味にみえる。でも、ほんとうに? 認知人類学者の著者は熱した炭の上を歩く人々の心拍数を測り、インドの祭りでホルモンの増減を測定。フィールドに実験室を持ち込んで、これまで検証されてこなかった謎めいた儀式の深層を、認知科学の手法で徹底的に調査する。ハレとケの場、両方にあふれる「儀式」の秘密と活用のヒントを探究する空前の書。 ジョセフ・ヘンリック(人類学者、ハーバード大教授) 「ギリシャの火渡りからアマゾンの恐ろしい祭礼まで、認知人類学者の著者は、リズム、ダンス、音楽、苦痛、犠牲などから成る、一見すると無意味で反復的で因果関係が不明瞭な〈儀式〉を、人類がどのように、なぜ行うのかを探求する。民族学的なデティール、個人のナラティヴ、認知科学の成果が盛り込まれた本書は、QOLや健康状態の改善、地域社会の構築のために、古代からの知恵であり最新の科学でもある〈儀式〉をどのように活用できるかを教えてくれる」 第1章 儀式のパラドックス 第2章 儀式と種 第3章 秩序 第4章 接着剤 第5章 沸騰 第6章 強力接着剤 第7章 犠牲 第8章 幸福 第9章 儀式の力の活用
生態学と社会科学の接点 生物の適応戦略と進化ゲーム 協力の進化 動物の社会 社会的ジレンマと環境問題 リスクと生態系管理 環境の価値をはかる 人類と環境とのかかわり 人間社会・生態結合系 湖沼の水質管理についての社会・生態結合ダイナミックス マラリア予防のための意思決定モデル
Among histories Indigenous articulations Varieties of indigenous experience Ishi's story Hau'ofa's hope Looking several ways Second life : the return of the masks Epilogue
東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、普及した背景等をSPレコードを軸に探求。 東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、レコードが東アジアに普及した背景や、日本が音楽の伝承に与えた影響などを、音盤(SPレコード)を軸に様々な角度から探求した。 19世紀に誕生した蓄音機は、20世紀に入りアジアでも急速に普及した。西洋のクラシック音楽の輸入盤ばかりでなく、日本、中国、台湾、朝鮮でもさまざまな録音が行われ、多くの音盤(SPレコード)が発売された。本書では、東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、レコードが東アジアに普及した背景や、複雑な構造の中で日本が音楽の伝承に与えた影響などが論じられている。当時、欧米の外資系を含む日本のレコード会社は、東アジア各地に積極的に進出し、録音、販売を行った。こうした東アジアのレコード産業の歴史は、グローバリゼーションのひとつの例と見ることができる。さらに、台湾と朝鮮半島のレコード産業の発展は中国とは異なり、日本の植民地支配の影響も大きかった。日本のレコード産業と植民地の歴史には、グローバリゼーションや資本主義、植民地主義が複雑に交錯している。また本書が音盤(レコード)を扱いながらも、書名に「音楽」ではなく「声」を用いているのは、当時のこれらのレコードの内容が音楽にとどまらず、歌はもちろんのこと、演説や映画説明、戯劇など、多様な声の表現にわたっていたものだからだ。東アジアの歴史を、音盤を通して様々な角度から探求した一冊。 総説 蓄えられた声を百年後に聴く──私たちはなぜこの百年のレコード史を追っているのか(劉 麟玉) 第1部 東アジアのレコード産業――声の近代 第1章 日本の円筒録音時代――声の再生、模倣、保存(細川 周平) 第2章 日本統治時代における台湾レコード産業と「台湾盤」の市場メカニズム(黃 裕元/訳:岡野〔葉〕翔太) 第3章 台湾テイストを作り出す――日本蓄音器商会の台湾レコード制作の戦略を探る(王 櫻芬/訳:長嶺 亮子) 第4章 「新譜発売決定通知書」を通してみる台湾コロムビアレコード会社と日本蓄音器商会の間の「対話」──戦争期のレコード発売状況の調査を兼ねて(一九三〇〜一九四〇年代)(劉 麟玉) 第5章 写音的近代と植民地朝鮮、一八九六~一九四五(山内 文登) 第2部 東アジアのレコード音楽の諸相――声の平行と交錯 第6章 草津節――お座敷からレコードへ、そして外地へ(福岡 正太) 第7章 戦前・戦中台湾のコロムビアレコードの音から――歌仔戯(ゴアヒ)と新興劇の音楽の繋がりをさぐる(長嶺 亮子) 第8章 清朝末期から中華民国期の崑曲SPレコード──吹込者と録音内容にたどる近代伝統劇界の変遷(尾高 暁子) 第9章 義太夫節・パンソリ・蘇州弾詞の歴史的音源に聴く演奏様式の変容(垣内 幸夫)
人間とは何か?――先史時代から未来まで,ゲノムレベルから地球生態系まで,悠久にして広大なテーマを扱う自然人類学.本書は,東京大学で開講されている人気講義をもとに,研究の最前線を臨場感あふれる文章で解説.読者を,心躍る世界へ誘う. はじめに――自然人類学を学ぶ意義と魅力(長谷川壽一) I 人類進化の歩み 第1章 ヒト以外の霊長類の行動と社会――ヒトを相対化する(中村美知夫) 第2章 猿人とはどんな人類だったのか――最古の人類(河野礼子) 第3章 ホモ属の「繁栄」――人類史の視点から(海部陽介) 第4章 旧人ネアンデルタールの盛衰――現生人類との交代劇(近藤 修) II ヒトのゲノム科学 第5章 アジア人・日本人の遺伝的多様性――ゲノム情報から推定するヒトの移住と混血の過程(大橋 順) 第6章 全ゲノムシークエンスによる人類遺伝学――ヒトゲノムの変異と多様性(藤本明洋) 第7章 自然選択によるヒトの進化――形質多様性と遺伝的多様性(中山一大) 第8章 縄文人のゲノム解読――古代ゲノム学による人類の進化(太田博樹) III 生きているヒト 第9章 ヒトはなぜ直立二足歩行を獲得したのか――身体構造と運動機能の進化(荻原直道) 第10章 なぜヒトは多様な色覚をもつのか――霊長類の色覚由来から考える(河村正二) 第11章 ヒトの環境適応能――生理的適応現象とその多様性(西村貴孝) 第12章 生存にかかわる腸内細菌――ホモ・サピエンスの適応能(梅﨑昌裕) IV 文化と人間――文理の境界領域 第13章 言語の起源と進化――その特殊性と進化の背景(井原泰雄) 第14章 考古学と自然人類学――縄文時代・弥生時代の生業を考える(米田 穣) 第15章 人種と人種差別――文化人類学と自然人類学の対話から(竹沢泰子) 【コラム】 霊長類の子育て(齋藤慈子) 人類化石の発見,いかに(諏訪 元) 旧人と新人の文化(西秋良宏) HLAと日本人の形成(徳永勝士) 霊長類の遺伝(石田貴文) 人口からみるヒト(大塚柳太郎) 人新世:ヒトが地球を変える時代(渡辺知保) In Pursuit of Human Nature: An Introduction to Physical Anthropology Yasuo IHARA, Masahiro UMEZAKI and Minoru YONEDA, Editors
ベナンの妖術師 ヒマラヤの雪男イエティ どうして「呪われた」と思ってしまうの? かもしれない、かもしれない…… ヴァヌアツで魔女に取り憑かれる 中央オーストラリアの人喰いマムー 幼児の死、呪詛と猫殺しと夢見 鬼のいる世界 映像によって怪異な他者と世界を共有する方法
文化概念の再考を迫る名著、待望の邦訳。著者インタヴューと解説「批判人類学の系譜」(太田好信)を収録。 純粋なものが、狂ってゆく 第1部 言説(民族誌的権威について 民族誌における権力と対話-マルセル・グリオールのイニシエーション ほか) 第2部 転置(民族誌的シュルレアリスムについて 転置の詩学-ヴィクトル・セガレン ほか) 第3部 収集(部族的なものと近代的なものの歴史 芸術と文化の収集について) 第4部 歴史(『オリエンタリズム』について マシュピーにおけるアイデンティティ)
ひとりの心理臨床家の考える人間の生とアーサー・クラインマンの存在 21世紀における感性と主観性の変容 悲劇そしてケアをすること ケアをすること-より人間らしくなるための旅 不治の病いを生きる人へのケア 病いと人間的体験 耐えるということ ケアをすること 道徳的・人間的体験としてのケアの実践 クラインマンから学んだいくつかのこと
主体/客体の二分法を超え、脱中心的なネットワークとして社会を記述する画期的な方法論を、提唱者であるラトゥール自身が解説する。 主体/客体、人間/自然といった二分法を超え、脱中心的なネットワークとして社会を記述する画期的な方法論を、提唱者であるラトゥール自身が解説する入門書。 主体/客体あるいは人間/自然といった近代的世界認識を超え、脱中心的なネットワークとして社会を記述するアクターネットワーク理論。アーリ、ラッシュら多くの社会学者に影響を及ぼし、技術社会論、情報論、経営学、地理学、人類学、哲学、アートにもインパクトを与えた方法論を、提唱者であるラトゥール自身が解説する。現代の知見をふまえてアップデートされたラトゥール社会学の核心。 謝 辞 序章──連関をたどる務めに立ち帰るには 第Ⅰ部 社会的世界をめぐる論争を展開させるには はじめに──論争を糧にすることを学ぶ 第一の不確定性の発生源──グループではなく、グループ形成だけがある グループ形成が残す痕跡のリスト ノー・ワーク、ノー・グループ──働きかけがなければ、グループはない 媒介子 対 中間項 第二の不確定性の発生源──行為はアクターを超えてなされる 〈アクターが行為する〉ように他の多くのものがしている 実地に根ざした形而上学を探究する エージェンシーをめぐる論争を地図に示すためのリスト 誰かに何かをさせる方法 第三の不確定性の発生源──モノにもエージェンシーがある 働いているアクターの種類を増やさなくてはならない モノを行為の進行に与するものにする モノはところどころでしか痕跡を残さない モノの活動が簡単に可視化される状況のリスト 権力関係を忘却してきたのは誰なのか 第四の不確定性の発生源──〈厳然たる事実〉対〈議論を呼ぶ事実〉 構築主義 対 社会構築主義 科学社会学の幸いなる難破 社会的説明は必要ない 翻訳 対 移送 経験には目に映る以上のものがある 〈議論を呼ぶ事実〉を展開するのに資するリスト 第五の不確定性の発生源──失敗と隣り合わせの報告を書きとめる テクストを書くのであって、窓ガラスを通して見るのではない ついにネットワークが何であるのかを定義する 基本に帰る──ノートのリスト 批判ではなく、展開 アリ/ANTであることの難しさについて──対話形式の幕間劇 導入──消極的な理論と積極的な理論 ネットワークと、記述の重要性について 解釈的なパースペクティブと客観主義的なパースペクティブについて 相対主義、ANT、コンテクストについて 文字による記述、作り話、論文について 痕跡を残さないアクターと、研究から学ぶ必要のないアクターについて 反省性と説明について 構造主義とANTの果てしない隔たり 科学、権威、意義について 第Ⅱ部 連関をたどり直せるようにする はじめに──社会的なものをたどることは、なぜ難しいのか? 社会的なものをフラットな状態に保つ方法 第一の手立て──グローバルなものをローカル化する パノプティコンからオリゴプティコンへ パノラマ 第二の手立て──ローカルなものを分散させ直す 分節化、ローカル化の装置 対面的な相互作用という場の怪しさ プラグイン アクターから、分かちがたい結合へ 第三の手立て──複数の場を結びつける 規格から収集型の言表へ ついに媒介子 プラズマ──ミッシング・マス 結章 社会から集合体へ──社会的なものを組み直すことは可能か どのような政治認識論なのか? 数あるなかの一学問分野 政治の異なる定義 訳 註 訳者あとがき 文献一覧 事項索引 人名索引
息を「吹く」しぐさと「吸う」しぐさ 指を「隠す」しぐさ 指を「弾く」しぐさ 股のぞきと狐の窓 「後ろ向き」の想像力 虫の動きを封じるしぐさ 祟りと摂食行為 エンガチョと斜十字 ハナヒからクサメへ クシャミの由来譚 一声と二声の俗信 片道と往復の俗信 「同時に同じ」現象をめぐる感覚と論理 しぐさと呪い