津久井やまゆり園「優生テロ」事件、その深層とその後: 戦争と福祉と優生思想
「津久井やまゆり園事件」を歴史・犯罪論的にみたとき、「戦争と福祉と優生思想」という主題が現れる。 第1部として、事件の起きた「重度知的障害者入所施設」が戦後福祉の宿痾であることを歴史的に論じる。 第2部では、裁判がなぜ「植松独演会」と称されたのかを、刑事事件の形骸化の問題として描き出す。刑事事件を長年取材してきた著書による、供述調書や傍聴記録の分析は秀逸。 第3部は、「植松聖」を時代のシンボリックな存在と見立て、津久井やまゆり園事件が私たちの生きているこの社会からどうして現れてきたのかを記した「犯罪論」。永山則夫事件から50年。犯罪の質が経済的な動向、新自由主義や合理化の流れのなかでいかに変容してきたかを記す。 プロローグ 植松被告人の短い手紙から読み解く三つのこと 第Ⅰ部 戦後福祉の「宿痾」 第一章 被害者と遺族を「記録」する 第二章 「施設」はなぜ福祉の「宿痾」なのか――「匿名」問題の深層にあるもの(1) 第三章 六〇年代福祉と青い芝の会神奈川連合会――「匿名」問題の深層にあるもの(2) 第Ⅱ部 裁判がなぜ「植松独演会」になったのか 第四章 二〇一六年七月二六日未明、この惨劇をどう「記録」すればよいのか 第五章 法廷論議はどう組み立てられていたか 第六章 刑事裁判はなぜ形骸化するのか 第Ⅲ部 「植松聖」という深層へ――彼はなぜ「孤独」だったのか 第七章 「戦争と経済」から読む戦後犯罪私史 第八章 「植松聖」が語らなかったこと 第九章 永山則夫と植松聖、それぞれの「母よ!殺すな」問題 第Ⅳ部 その後――戦争とテロルと「植松聖」たち 第一〇章 テロ・ウィルスと「植松聖」たち 第一一章 植松死刑囚の手紙への遠くからの返信――戦争と福祉と優生思想 第一二章 二〇二二年八月、緊急の追記――二人のテロリストと安倍元総理 ながいあとがき――植松死刑囚に送った父親の「手記」