脳のなかの天使と刺客: 心の健康を支配する免疫細胞
脳細胞ミクログリアを制御すれば、うつ病など精神疾患の治癒、認知症の予防は夢物語ではない。医学を書き変える科学発見の物語。 うつ病も、不安障害も、アルツハイマー病も、《ミクログリアの過活動》が原因だった 脳を守り、破壊もするミクログリア細胞―― その働きを制御すれば、精神疾患の治癒、認知症の予防は夢物語ではない。 「脳の免疫」の発見がもたらす医療革命を描くノンフィクション。 :::::::本書の推薦のことば::::::: 「小さな脳細胞ミクログリアについて、驚くべき発見の数々が説得力をもって語られる。そうした発見は、うつ病や不安障害、アルツハイマー病などの精神・神経疾患に対する考え方だけでなく、人間の心についての理解までをも変えてしまうかもしれない。希代のストーリーテラーで、手練れのジャーナリストによる見事な解説は、研究者から医師、一般の人々にまで、健康に対する革新的な視点を与えてくれる。ブラボー!」 ――ダニエル・J・シーゲル(カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部臨床医学 教授) 「著者は正確な情報と思いやりの心をもって、驚くべき科学発見のストーリーを語る。何世紀も続く医学の常識を覆し、精神医学と医療、心身の病の治療を根本から書き換える発見の数々にページを操る手が止まらなくなる。うつ病や不安障害、アルツハイマー病など『ミクログリア』病が急増しているなか、本書が示すのは明るい兆しと希望だ。認識がガラリと変わること請け合いの一冊」 ――クリスティーナ・ベセル(ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院 教授) 「私たちは、脳を守り修復できるという新しい可能性を秘めた時代に生きている。特に精神医学の分野では、神経炎症を特定し治療する手法によって、まったく新しい展開を迎えている。本書はこの革命的な進歩を鮮明に描き出す」 ――スザンナ・タイ(メイヨー・クリニック トランスレーショナル・ニューロサイエンス研究室室長、クイーンズランド脳研究所シニア・リサーチフェロー) 「脳の『シンデレラ細胞』の科学的なストーリーを見事に解説した。かつては脳のなかを掃除しているだけの細胞と思われていたミクログリアは、うつ病から認知症までさまざまな疾患で驚くべき役割を果たしている。脳が免疫の働く器官であるという新しい知見をもたらしたブレークスルーについて解説し、その科学的発見が脳と心の病気の治療に応用できる可能性を掘り下げる」 ――トーマス・インセル(マインドストロング・ヘルス社長、アメリカ国立精神衛生研究所前所長) 「心と体の緊密なつながりを証明する最新の研究によって、心的外傷後ストレス障害や依存症、うつ病、認知症に対する考え方が大きく変わる可能性がある。この本は、いま苦しんでいる人々に希望や前進する方法を与えてくれるだけでなく、今後数十年に科学者と医師たちによって起こされるであろうパラダイムシフトをガイドしてくれている」 ――ルース・レイニアス(ウエスタン・オンタリオ大学 教授、心的外傷後ストレス障害研究長) うつ病も、不安障害も、アルツハイマー病も、《ミクログリアの過活動》が原因。脳細胞ミクログリアを制御できれば、精神疾患の治癒、認知症の予防は夢物語ではない。医学を一変させた発見を描く科学読み物。 プロローグ 体が脳を攻撃する時 第 一 章 はからずも神経生物学者に 自然の学徒 神経科学の謎 ハウスキーパーは仮の姿 共通の起原 第 二 章 一〇メートルの井戸の底から三メートルだけ 名前のない恐怖 隔離された患者 第 三 章 脳内の友軍砲火 いくつもの顔を持つ細胞 第 四 章 ミクログリアはいたるところに 傷ついたミクログリア ミクログリア・コネクション 健康に対する新しい視点 「心の病気」と「体の病気」との境界線を取り払う 第 五 章 脳に架ける橋 髄膜に存在しないはずのないもの 脳へ続くパイプライン 第 六 章 「新しい解決策なんかありそうもない」 メンタルヘルスのショッキングな統計 第 七 章 流行する脳障害 微生物、病原体、およびヒトの振る舞い 清潔すぎると同時に不潔すぎる ミクログリアが狂う時 うつと不安──社会的病原体による流行病なのか 病める少女たち 第 八 章 脳ハッキング 経頭蓋磁気刺激で苦しみは癒えるか? ミクログリアとニューロンのつながり──脳を再生する 第 九 章 悩める心 変化へのカウントダウン 医療の新時代 第 十 章 アルツハイマー病の解決 ミクログリアと遺伝子とアルツハイマー病 アルツハイマー病バイオマーカー発見のレース 早期の介入法があったら 希望に満ちた前途 第十一章 死に物狂いで健全なシナプスを探す 脳波を読む ニューロフィードバックでミクログリアをハッキング ミクログリアと痛覚のフィードバックループ 第十二章 家族のまとめ役を再起動する 初回治療――脳を褒める 治療六回目――ささやかな変化 治療九回目――一進一退 治療一四回目――体の変化 治療一八回目――心の変化 治療二二回目――自己制御 最終治療 第十三章 脳のための消火器を探して 脳の損傷と荒れ狂ったミクログリア 第十四章 絶食で絶好調? 腸の感覚──ミクログリアと微生物叢の関連 一週間の挑戦 第十五章 将来の医療 セロトニンを超えて 遺伝子を標的とした治療 脳のための免疫療法 体内最大の神経が脳の最小の細胞をリセット? 幻覚誘発薬 強力な組み合わせ効果 第十六章 最終分析 将来への希望 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 原注