現代エスノグラフィー: 新しいフィールドワークの理論と実践 (ワードマップ)
◆街へ出る前に、フィールドへ行く前に◆ フィールドワーク、エスノグラフィー(民族誌)について、手紙の書き方、ノートの取り方から機器の扱い方まで、手取り足取り解説した本は多くあります。J・クリフォードらの『文化を書く』以来、文化を誰が、どこから、どう書くのか、という政治性が指摘されていますが、本書はそのような問題意識を組み入れながら、ポジショナリティ、自己再帰性、表象の政治、当事者研究などの基本概念を詳述し、介護、障害、ボランティアなどの新しい対象分野を取り上げ、さらにはフィールドに出たときに調査者が出会う初歩的な問題についても、体験をとおした適切なアドバイスをしています。これからのフィールドワークに必携の「思想的」ガイドブックといえましょう。 ワードマップ 現代エスノグラフィー─目次 はじめに 「新しい」アプローチ一覧 第一部 現代エスノグラフィーの展開 エスノグラフィー現場を内側から経験し記述する 『文化を書く』エスノグラフィー批判の衝撃 自己再帰性他者へのまなざし、自己へのまなざし ポジショナリティ誰が、どこから、どう見るのか ■コラム 厚い記述 表象の政治語る、語られる、語りなおす ポスト構造主義とポストモダニズム「知識」の断片性・不完全性・文脈依存性 第二部 エスノグラフィーの「新しい」アプローチ アクティヴ・インタヴュー質問者と回答者が協働する フェミニスト・エスノグラフィー「女」が「女」を調査する ネイティヴ・エスノグラフィー「内部者」の視点から調査する 当事者研究「自分自身でともに」見いだす アクション・リサーチ協働を通して現場を変革する チーム・エスノグラフィー他者とともに調査することで自らを知る ■コラム チームでの実践を振り返る ライフストーリー個人の生の全体性に接近する オートエスノグラフィー調査者が自己を調査する オーディエンス・エスノグラフィーメディアの利用を観察する マルチサイテッド・エスノグラフィーグローバルとローカルを繋ぐ 第三部 応用研究 アイデンティティ「なる」「する」様態に迫る ジェンダー・セクシュアリティ男/女の線びきを問いなおす 人種・エスニシティ越境する人々の意味世界を理解する 学校教師と生徒のまなざしを明らかにし、変えていく 医療・看護病いとケアの経験を記述する 障害経験される世界に接近する 生/ライフ「生き方」を主題化し表現する 社会運動・ボランティア「参与」しながら観察する メディア・大衆文化メディアが受容される文脈をさぐる 第四部 フィールドで出会う問題 調査の説明と同意 フィールドに入るときに 権力 フィールドのただなかで 親密性 フィールドのただなかで 守秘義務と匿名性 フィールドを後にするときに 利益 フィールドで得たもののゆくえ ■フィールドからの声 話してもらえる私になる 『ギャルとギャル男の文化人類学』の現場から お嬢様がお嬢様を調査するジレンマ 恋愛感情にまつわることからは逃れられない おわりに ブックガイド 事項索 人名・書名索引 装幀―加藤光太郎