生理心理学と精神生理学 第II巻 応用
感情・情動,認知,社会・健康,睡眠,犯罪,スポーツ領域における最新の成果を示し,当該領域での測定技術および解析について詳述。 応用的知見として心理学各領域への適用を扱う。感情・情動,認知,社会・健康,睡眠,犯罪,スポーツ領域における最新の成果を示しつつ,必要に応じて基礎的知見にも言及。生理心理学的測定技術および解析について詳述することで,読者の理解を図る。また,本章で触れられなかった動物実験に関しては3つのコラムで補填。 ◆第Ⅱ巻の主な目次 第1 部 感情・情動 1 章 ネガティブ感情の精神生理学 2 章 ポジティブ感情の精神生理学 3 章 感情と表出活動 4 章 音楽と生理反応 5 章 感情と脳 第2 部 認知 6 章 知覚・注意・認知過程 7 章 刺激入力前・反応出力 8 章 瞬目・眼球運動・瞳孔 9 章 言語(ERP) 10 章 実作業場面における認知状態の評価 第3 部 社会・健康 11 章 社会的要因と精神生理 12 章 集団意思決定 13 章 精神神経内分泌免疫学と健康 14 章 社会的痛み 15 章 アレキシサイミア 第4 部 睡眠 16 章 睡眠と覚醒の調節機構 17 章 睡眠と覚醒の評価法 18 章 睡眠中の精神活動と情報処理 19 章 夜間睡眠と日中の眠気 20 章 睡眠と生物リズム 第5 部 犯罪 21 章 精神生理学的情報検出: 犯罪捜査におけるポリグラフ検査 22 章 中枢神経系での隠匿情報検査: 事象関連電位(ERP) 23 章 末梢系での虚偽検出法 24 章 衝動性 25 章 サイコパシー 第6 部 スポーツ 26 章 スポーツと脳科学 27 章 プレッシャー 28 章 リラクセーション 29 章 運動イメージ 30 章 スポーツと内分泌・免疫応答 まえがき 第Ⅱ巻の編集者を代表して 第1 部 感情・情動 1 章 ネガティブ感情の精神生理学 1 節.感情と精神生理学的反応 1.感情とは 2.実験室における方法論上の留意点 2 節.ネガティブ感情の精神生理学的特徴 1.ネガティブ感情喚起時の生理反応 2.ネガティブ感情の持続と反復 3 節 ネガティブ感情の制御 1.これまでの感情制御研究 2.ネガティブ感情の制御と精神生理学的反応 3.これからの感情制御研究 2 章 ポジティブ感情の精神生理学 1 節 ポジティブ感情研究の始まり 2 節 ポジティブ感情と自律神経系活動 3 節 ポジティブ感情と内分泌系活動 1.コルチゾール 2.オキシトシン 3.その他のホルモン 4 節 ポジティブ感情と免疫系活動 1.ナチュラルキラー細胞 2.炎症反応 3.分泌型免疫グロブリンA(Secretory Immunoglobulin A,s-IgA) 5 節 ポジティブ感情の精神生理学研究の新しい展開 3 章 感情と表出活動 1 節 表情筋 1.表情筋による感情の表現 2.表情筋の生理学的測定 3.感情状態との対応 4.他者の表情表出に対する表情筋活動 2 節 音声 1.音声表出活動の生理的基盤 2.音声表出活動の記述方法 3.感情音声の収集方法 4.感情音声の音響的特徴 3 節 目の動き 1.眼球運動 2.瞳孔 3.瞬目 4.涙 4 章 音楽と生理反応 1 節 音楽と感情 2 節 音楽による感情と末梢神経活動および脳活動 3 節 音楽による強烈な感情と末梢神経活動および脳活動 4 節 感情がもたらす生理反応に関する音楽と他種刺激の比較 5 章 感情と脳 1 節 はじめに 2 節 感情の評価に関わる扁桃体 3 節 快の評価に関わる側坐核 4 節 感情に伴う行動・生理反応を喚起する視床下部・脳幹 5 節 感情を制御する前頭葉 6 節 感情を調整する小脳 7 節 おわりに 第2 部 認知 6 章 知覚・注意・認知過程 1 節 視覚 1.はじめに 2.空間位置への注意:P1・N1 の調節 3.特徴への注意:SN 4.一過性の注意の焦点化:N2pc 5.作業記憶の保持:CDA 6.予測に基づく逸脱事象の検出:vMMN 7.おわりに 2 節 聴覚 1.はじめに 2.選択的注意とHillyard のパラダイム 3.聴覚認知過程を反映するERP 成分 4.Näätänen のパラダイムと記憶痕跡モデル 5.まとめ 3 節 体性感覚・多感覚 1.体性感覚情報処理とERP 2.多感覚情報処理とERP 7 章 刺激入力前・反応出力 1 節 刺激入力前 CNV・SPN 1.刺激入力前における脳活動の測定(脳波緩電位成分) 2.随伴性陰性変動 3.非運動成分としての刺激先行陰性電位 4.SPN を測定するための実験パラダイム 5.CNV・SPN 測定時に考慮すべき点 6.SPN の分析方法 7.SPN の機能的意義(知覚か情動か?) 8.SPN の神経基盤 9.刺激前入力・SPN 研究の展望 2 節 反応出力に関わるERP 成分 1.反応準備や抑制に関わるERP 成分 2.エラー反応後に生じるERP 成分 3.反応関連ERP の応用とその貢献 8 章 瞬目・眼球運動・瞳孔 1 節 瞬目と認知活動 2 節 眼球運動と認知活動 3 節 瞳孔と認知活動 4 節 視覚運動系と認知活動 9 章 言語(ERP) 1 節 言語関連ERP の発見 2 節 意味と統語の区別 3 節 文処理過程とERP 1.ELAN(N125) 2.局所的LAN/ 一過性LAN 4 節 日本語のERP 研究 1.日本語とN400 2.日本語とP600 5 節 おわりに 10 章 実作業場面における認知状態の評価 1 節 はじめに 2 節 覚醒水準や心的疲労の評価 3 節 心的作業負荷の評価 4 節 特定の認知処理に対する資源配分の評価 5 節 おわりに 第3 部 社会・健康 11 章 社会的要因と精神生理 1 節 対人要因と心臓血管反応 1.導入 2.心臓血管系精神生理学の問題点 3.ストレスを増大させる対人要因 4.ストレスを緩和する対人要因 5.心臓血管反応説明モデルに照らした解釈 6.今後の展望 2 節 社会的感情と中枢神経活動 1.中枢神経系を指標とした怒りの研究 2.接近動機づけと左前頭外側部の活性化 3.怒り特性と接近動機づけ 4.左前頭部の活動抑制と怒りの反応 5.中枢神経系と自律神経系の同時計測 6.共感の中枢活動 7.今後の展望 12 章 集団意思決定 1 節 はじめに 1.行動モニタリング 2.行動結果の評価を反映するERP 2 節 社会的状況における行動結果の評価 1.他者との課題の遂行における行動結果の評価 2.集団意思決定に伴う結果の評価 3.他者との意見の葛藤 3 節 おわりに 13 章 精神神経内分泌免疫学と健康 1 節 ストレスと精神神経内分泌反応 1.アロスタティック負荷 2.ストレスとコルチゾール 3.まとめ 2 節 疲労研究と精神神経内分泌免疫学(PNEI) 1.疲労研究概況 2.疲労の定義,評価方法 3.疲労のメカニズムとPNEI 4.疲労研究の最新の動向 5.疲労とPNEI の応用研究 14 章 社会的痛み 1 節 社会的痛みとは? 2 節 社会的痛みの神経機序 1.オピオイド 2.前部帯状回と前島 3 節 社会的痛みの個人差 4 節 社会的痛みの制御 5 節 社会的痛みとサポート 6 節 社会的痛みの進化論的考察 7 節 痛みの心身共有機序を超えて 15 章 アレキシサイミア 1 節 アレキシサイミア概念の成り立ちと測定 2 節 感情認知に関する実験研究 3 節 精神生理学的な実験研究 1.Hyper-arousal theory を支持する実験研究 2.Hypo-arousal theory を支持する実験研究 3.近年の精神生理学的実験研究の動向 4.脳内基盤に関する実験研究 第4 部 睡眠 16 章 睡眠と覚醒の調節機構 1 節 睡眠の測定法 1.睡眠研究の歴史 2.脳波による睡眠判定 3.ヒトの睡眠経過 4.レム睡眠と夢 5.レム睡眠とノンレム睡眠の切替え機構 6.ノンレム睡眠の恒常性維持機構 2 節 内因性睡眠物質 1.PGD2 による睡眠誘発 2.PGD2 誘発睡眠の情報伝達系 3.生理的な睡眠調節におけるPGD2・アデノシン系の重要性 4.新たな睡眠中枢としての側坐核の同定 17 章 睡眠と覚醒の評価法 1 節 睡眠の評価法 1.はじめに 2.主観的評価 3.睡眠日誌と活動量の測定 2 節.覚醒と眠気の評価法 1.はじめに 2.睡眠潜時反復検査 3.覚醒維持検査 4.行動版覚醒維持検査法 5.エプワース眠気尺度 6.Kalorinska Drowsiness Test 7.α波減衰テスト 8.Pupillographic Sleepiness Test 9.精神運動ヴィジランス課題 10.PERCLOS 11.Johns Drowsiness Scale 12.主観的評価法 18 章 睡眠中の精神活動と情報処理 1 節 夢の精神生理 1.夢の科学的検討 2.レム睡眠中とノンレム睡眠中の夢 3.レム睡眠中の生理現象と夢 4.急速眼球運動に伴う視覚情報処理と夢 5.まとめ 2 節 睡眠と記憶 1.はじめに 2.記憶の種類 3.ノンレム睡眠,レム睡眠と記憶 4.理論モデル 5.シナプス恒常性仮説 6.二元プロセス仮説 7.逐次仮説 8.能動的システム定着仮説 9.最後に 19 章 夜間睡眠と日中の眠気 1 節 睡眠削減と睡眠延長 1.睡眠時間の削減と心身の健康 2.睡眠時間の削減が認知機能に与える影響 3.日本人の睡眠時間 4.睡眠時間延長の効果 2 節 日中の眠気と仮眠 1.日中の眠気 2.仮眠の効果 20 章 睡眠と生物リズム 1 節 生物リズム 1.生物リズムとは 2.サーカディアンリズム 3.生物時計の所在 4.光受容器 5.光への反応 6.脱同調 7.生理心理学・精神生理学における生物リズムの意義 2 節 睡眠の発達・性差 1.睡眠の発達的変化 2.睡眠の加齢変化 3.クロノタイプの変化 4.睡眠の性差 第5 部 犯罪 21 章 精神生理学的情報検出: 犯罪捜査におけるポリグラフ検査 1 節 隠匿情報検査とは 2 節 日本の犯罪捜査におけるCIT の実際 3 節 CIT の理論 4 節 CIT の正確性 5 節 ポリグラフ検査の周辺 1.CIT 以外のポリグラフ検査法 2.日本の特色 3.研究と実践 4.おわりに 22 章 中枢神経系での隠匿情報検査: 事象関連電位(ERP) 1 節 はじめに 2 節 ERP を用いたCIT 1. 検査手続き 2. 典型的な結果 3. P300 振幅の計測 4. 検査の正確性 3 節 犯罪捜査への応用に向けた研究 1. カウンターメジャー対策 2. 自律神経系反応との組み合わせ 4 節 検査中の認知過程に関する研究 1. 記銘時の状態の効果 2. 隠蔽の意図の効果 5 節 fMRI を用いた基礎研究とERP 6 節 まとめと今後の展望 23 章 末梢系での虚偽検出法 1 節 皮膚電気活動系 1.はじめに 2.CIT におけるSCR の特徴 3.解析方法 4.CIT の心理学的機序と生理学的機序 5.中枢神経系指標とEDA の同時計測の研究 6.判定指標としてのSCR 7.SCR に影響を及ぼす要因 8.展望 2 節 呼吸系 1.呼吸の測定 2.CIT 時の呼吸反応 3.展望 3 節 心臓血管系 1.緒言 2.指標および測度 3.解析方法 4.心臓血管系反応の生起メカニズム 5.展望 24 章 衝動性 1 節 衝動性とは何か 2 節 運動制御に関わる衝動性 3 節 報酬感受性にかかわる衝動性 4 節 衝動性と遺伝子との関連性 1.衝動性と遺伝子多型 2.衝動性とセロトニン 3.衝動性とドーパミン 4.トリプトファン急性枯渇法 5 節 むすび 25 章 サイコパシー 1 節 サイコパシーと犯罪 1. サイコパシーの特徴 2. サイコパスと犯罪者 2 節 サイコパシーと虚偽検出 1. 対照質問法 2. 隠匿情報検査 3 節 サイコパシーと末梢神経系の活動 1. 定位反応 2. 防御反応 4 節 サイコパシーと事象関連電位 1. 注意 2. 感情的評価 3. 行動制御 第6 部 スポーツ 26 章 スポーツと脳科学 1 節 スポーツにおける脳科学 2 節 スポーツパフォーマンスと脳活動 3 節 横断研究 4 節 縦断研究 27 章 プレッシャー 1 節 プレッシャーとは? 2 節 プレッシャーとパフォーマンスの関係 3 節 プレッシャーによるパフォーマンス低下の認知的説明 4 節 プレッシャーによる運動学的変化 5 節 プレッシャーによる動力学的変化 6 節 プレッシャーによる皮質脊髄路の興奮性の変化 7 節 プレッシャーによる視線行動の変化 8 節 実験研究の外的妥当性 28 章 リラクセーション 1 節 リラクセーションの概念 1.ストレスとリラクセーション 2.ストレスによる反応 3.リラクセーションの評価 2 節 スポーツとリラクセーション 1.身体運動によるリラクセーション 2.覚醒とパフォーマンス 3.覚醒とパフォーマンスに関係する要因 3 節 アスリートのリラクセーションの実践 1.アスリートが求めるリラクセーション 2.自律訓練法 3.漸進的弛緩法 4.呼吸法 5.バイオフィードバック法 29 章 運動イメージ 1 節 緒言 2 節 脳機能イメージング「前」の研究 3 節 脳機能イメージング「後」の研究 4 節 スキルレベルによる運動イメージ想起に伴う脳活動の違い 5 節 脳波を用いた運動イメージの研究 6 節 より効果的な運動イメージを描くための秘訣:PETTLEP 7 節 まとめ 30 章 スポーツと内分泌・免疫応答 1 節 はじめに:スポーツにおける精神神経内分泌免疫学概説- 2 節 スポーツの実施に伴う内分泌・免疫応答の生理学的特性 1.スポーツの実施に伴う内分泌応答 2.スポーツの実施に伴う免疫応答 3.まとめ-スポーツ心理学的指標としての内分泌・免疫応答 3 節 スポーツと内分泌・免疫応答に関連した研究動向 1.スポーツにおける主要なマーカー:コルチゾールの生理学的特性 2.起床時コルチゾール反応を用いた慢性ストレスに関する研究 3.競技不安に関連した研究 4.身体活動と生理心理学的ストレス反応に関する研究 5.オーバートレーニング症候群(Over Training Syndrome;OTS)に関する研究 6.スポーツ活動に伴う免疫応答:s-IgA を中心として 4 節 スポーツにおけるPNEI 指標を用いた研究の意義と展望 1.『こころ』か,『からだ』か 2.非侵襲的検査の展望 コラム①:ラットの援助行動 コラム②:恐怖と時間知覚 コラム③:ラットを用いた心的外傷後ストレス障害(PTSD)モデル 引用文献・参考文献 索引 監修者のことば