アジアの多重戦争1911-1949――日本・中国・ロシア

S・C・M・ペイン
みすず書房
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中国における第二次世界大戦、国共内戦、日中戦争の同時俯瞰的な通史。日中米ソの史料を駆使し、軍事研究から歴史をとらえた意欲作。 東アジアの戦後秩序はどのように形成されたのか、それは必然だったのか。本書は20世紀前半に東アジアで戦われた戦争に焦点を絞り、軍事研究の側からこの問いに答えようしている。なぜならそれは、もっぱら戦争に関わるからである。その際本書は、諸戦争の複雑な相互関係と全体像をとらえるために多重戦争(nested wars)という概念を導入している。それは「内戦」「地域戦争」「世界戦争」が入れ子式に重なった一塊のものとして歴史を見る。 1911年の清朝崩壊に端を発し1949年の中華人民共和国誕生で終息を見た国民党と共産党の長い「内戦」。満洲事変に始まる日中戦争という「地域戦争」。太平洋戦争を含む「世界戦争」。これらの戦争は互いに重なるだけでなく、一方が他方の原因となり結果となることで、密接に絡み合っていた。諸戦を別々に扱う歴史叙述には欠けがちな重要側面である。 著者はアメリカ海軍大学校戦略・政策学科で教鞭を執る。そこでは「大きく考える」ことが求められるという。軍事研究は「軍事」という狭い領域の学問と思われがちだが、本書は逆に、軍事の視点から歴史の新たな全体像を描き出している。歴史学と軍事研究をつなぎ、日英中露語の史料を駆使した意欲作。 謝辞 表記について 第一部 恐怖と野心――日本、中国、ロシア 第一章 序論――第二次世界大戦のアジアにおける起源 第二章 日本 1931-36年――ロシアの封じ込めと「昭和維新」 第三章 中国 1926-36年――混沌、そして天命の探究 第四章 ロシア 1917-36年――迫り来る二正面戦争と世界革命 第二部 多重戦争――世界戦争のなかの地域戦争、地域戦争のなかの内戦 第五章 1911年、中国の長い内戦の始まり 第六章 地域戦争――日中戦争 第七章 世界戦争――第二次世界大戦 第八章 長い内戦の終幕 第九章 結論――地域戦争の序幕、世界戦争の終幕としての内戦 監訳者あとがき 原注 年表 索引

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