日系アメリカ移民 二つの帝国のはざまで――忘れられた記憶 1868-1945
アメリカへ渡った日本人移民・日系アメリカ人たちの新たな土地での歩みは、二つの国家のはざまで揺れ動いた複雑さに満ちたものだった。日米双方の膨大な資料からトランスナショナルな歴史分析を行い、従来語られてこなかった歴史にも光を当てた精緻な歴史分析。 日本語版刊行にあたって 序章 二つの帝国に挟まれた日本人移民のトランスナショナリズム 第一部 日系人社会の複合的起源 第一章 商業移民、植民者、そして労働者――初期日系アメリカ社会の不均質な起源 第二部 コミュニティの形成と分岐 第二章 移民集団の再形成――道徳的な市民性のトランスナショナルな構築 日本人移民の指導者層とコミュニティの形成 人種排斥運動のもとでの道徳改革 第三章 「在米同胞」――人種排斥とアメリカの「マイノリティ」の誕生 排日運動と人種的従属 一世の「ディアスポラ」――人種的従属からの逃避 人種的分岐――アメリカのマイノリティと「アジアのリーダー」 第三部 先駆者と後継者 第四章 「民族発展の先駆者」――歴史の創造と人種的アイデンティティ 一世パイオニア論と「民族発展」の思想 歴史の策略と公的記憶の構築 一世パイオニア論におけるトランスナショナルとローカル 第五章 世代をめぐる問題――将来に向けた二世の教育 「第二世問題」への取り組み 二世の心の薫陶 第六章 移民の国際主義の報い――祖先の国の二世 一世の国際主義とヘリテージ学習 争いの場――懸け橋概念の多様性 祖先の国で暮らすよそ者たち 第四部 移民ナショナリズムの複雑さ 第七章 日本を助けることは自らを助けること――一世の愛国心の意味 日本帝国への献金と物資的な援助 「啓発運動」と「国民外交」 日本へ向けた愛国主義からアメリカニズムへ 第八章 エスニック・ナショナリズムと人種をめぐる闘争――カリフォルニア州デルタ地域におけるエスニック集団間の関係 エスニック集団間の軋轢の発生 デルタ地域における人種と階級、ならびに日系人としてのアイデンティティ 階級の無意識化としてのエスニック・ナショナリズム 終章 戦時の人種主義、国家主義、そして移民トランスナショナリズムの崩壊 注 おもな参照文献および史資料 監訳者あとがき 索引