中学生の数学嫌いは本当なのか: 証拠に基づく教育のススメ
「潜在連想」という視点から実証的に生徒のホンネに迫り,「偽装○○嫌い」の検出と救出を試みる。「教育の科学化」への挑戦。 日本の中学生の4割以上は「数学嫌い」であるというアンケート調査の結果は,本当に「科学的」であると言えるのか? 本書では,「潜在連想」という視点から実証的に生徒のホンネへと迫り,「偽装○○嫌い」の検出と救出を試みる。中学校教諭と教育心理学者による「教育の科学化」への挑戦。集団式簡易潜在連想テストの実施マニュアル付き。 ◆主な目次 はじめに 第1章 証拠に基づく教育の必要性 第2章 国際調査での日本の子どもたちの成績 第3章 アンケート調査の問題点 第4章 潜在連想構造を探る新しい検査法:こころのX線検査 第5章 学校教育現場で使える集団式潜在連想テストの開発 第6章 「偽装数学嫌い」生徒の検出 第7章 「偽装数学嫌い」生徒の救出 第8章 「こころのX線検査」のその他の活用例 第9章 教育の科学的研究の重要性:まとめに代えて 付 章 FUMIEテスト実施マニュアル おわりに はじめに 第1章 証拠に基づく教育の必要性 1.教育は間違った印象に左右されやすい 2.証拠に基づく教育 3.何が証拠なのか 1)調査結果は証拠にならない 2)因果関係の証拠はランダム化比較対照実験でしか得られない 3)ランダム化比較対照実験だというだけでは証拠不十分 4.この本で述べたいこと 第2章 国際調査での日本の子どもたちの成績 1.国際学力調査 2.PISA調査 1)「ゆとり教育」とPISAショック 2)幻だったPISAショック 3.TIMSS調査 1)TIMSS調査に現れた日本の子どもの特徴 2)「成績が良くて好き」から「成績が良いのに嫌い」になる 4.日本の子どもは嘘をついているのではないか 第3章 アンケート調査の問題点 1.学校で多用されるアンケート調査 2.アンケート調査の問題点:回答者が嘘をつく 1)嘘を見破る工夫 2)嘘をつかせない工夫 3)善意の嘘 3.アンケート調査の問題点:意識と無意識 1)フロイトの無意識とヘルムホルツの無意識 2)ロールシャッハテストの限界 4.国際学力調査のアンケート結果も正しいとは限らない 第4章 潜在連想構造を探る新しい検査法:こころのX線検査 1.潜在意識の科学的研究:プライミング効果 2.知識ネットワークモデルと潜在的認知プロセス 3.潜在的社会的態度測定のための潜在連想テストの開発 1)潜在的プロセスを反応時間で探る 2)反応時間の差に表れる潜在連想構造 4.潜在連想テストの活用の広がりと発展 1)プロジェクト・インプリシット 2)単一の測定対象のための潜在連想テスト 第5章 学校教育現場で使える集団式潜在連想テストの開発 1.学校では潜在連想テストは使えない 2.紙版の潜在連想テストというアイディア 3.集団式簡易潜在連想テスト「FUMIEテスト」の開発 1)キー押し反応の代わりに○×をつける 2)「速さ」を1分間の作業量で測る 3)ターゲット分類課題の廃止 4)評価語の選択と単語の提示順序の決定 5)作成されたFUMIEテストの信頼性と妥当性を測る 6)より良いものにするため改良を重ねる 第6章 「偽装数学嫌い」生徒の検出 1.学校での「研究」とは 2.FUMIEテストを用いた「偽装数学嫌い」生徒の検出 1)なぜ日本の中学生は数学を嫌うのか 2)中学生のホンネを探る 3.なぜ「数学嫌い」を偽装するのだろうか 第7章 「偽装数学嫌い」生徒の救出 1.やらなければ負けない 2.「偽装数学嫌い」生徒の戦略 1)数学と性差のステレオタイプとその真偽 2)不安と自信と自己暗示 3)間違った自己暗示の修正 3.「偽装を見破ること」の効果の科学的検証:ランダム化比較対照実験 1)「偽装数学嫌い」生徒の検出と2分割 2)「偽装数学嫌い」生徒の半分への潜在意識調査結果のフィードバック 3)効果の検証 4.この研究から得られた「証拠」 1)嘘の情報では効果が見られない 2)より確かな「証拠」とするために 第8章 「こころのX線検査」のその他の活用例 1.世界から取り残される日本の教育研究者たち 2.「こころのX線検査」の活用例 1)中学生の教科嫌いと潜在意識の乖離 2)中学生の集団登山前後での「登山」に対する潜在意識の変化 3)障害者に対する潜在的態度測定 4)外国人に対する潜在的態度測定 3.その他の「こころのX線検査」の活用の可能性 1)「学校」に対して否定的な潜在イメージを持つ生徒への予防対策 2)不登校児童生徒の「学校」に対する潜在イメージの変化 3)「ひらめき☆ときめきサイエンス」の効果の科学的検証 4)中学生の潜在的な価値観:中学生にとって一番「良いイメージのもの」 4.「こころのX線検査」という新しいツール 第9章 教育の科学的研究の重要性:まとめに代えて 1.教育の科学化 2.ランダム化も比較対照も科学の常識 1)比較対照条件の重要性 2)ランダム化が必要な人文社会科学系の実験 3.実験を120年以上前に導入した心理学 4.「教育の科学化」と実験教育学・教育心理学 5.教育心理学の停滞と復権 6.学校におけるランダム化比較対照実験の重要性の理解と協力 付 章 FUMIEテスト実施マニュアル おわりに 文献 索引