文庫 増補版 うまい日本酒をつくる人たち: 酒屋万流 (草思社文庫)
酒屋万流(さかやばんりゅう)―― 日本酒はつくり手の考え方や技術技法、酒蔵のある土地の風土や歴史伝統によって、じつに多種多様な「うまさ」が存在する。 その愉しみを実際に全国各地の酒蔵を訪ねて、つくり手本人から直接伺い、 「うまい酒」を実際に味わった「日本酒・酒屋万流」の極上本。 「つまるところ、日本酒はどれも愛おしい。 いろんな蔵や酒の魅力が百花繚乱してこそ、と強く念じている。 では、今宵もうまい酒をちくとやりましょう」(あとがきより) 新章書き下ろし・各酒蔵の銘酒写真掲載 序章 日本酒はいま、本当にしあわせか 第一章 うまい日本酒はどこへ行く?――新政 第二章 「若さ」について――誉池月 第三章 燗酒の逆襲――丹澤山 第四章 地酒という生きかた――蓬萊泉 第五章 バランスの妙――まんさくの花 第六章 日々吞む酒とは――北雪 第七章 日本酒の会におもむく 第八章 福島の親分――末廣 第九章 うまい酒をつくるということ――モルトウイスキー、クラフトビール 第十章 酒屋万流――花巴、アフス、伊根満開 第十一章 文化をになう酒――大信州 第十二章 吞み飽きしないうまい酒――土田麹九割九分【書き下ろし新章】 序章 日本酒はいま、本当にしあわせか 花の下にて酒酌み交わす/いま、日本酒が試されている 第一章 うまい日本酒はどこへ行く?――新政 日本酒のメインストリーム/クオリティ、文化性、そして思想/たしかな世界観をもつ蔵元/日本酒のあるべき姿/「新政は宣言の蔵」/「革命児」ではなく「改革者」/江戸時代に完成した醸造法/酒造りで集落を再生させたい/日本酒ブームという危うい岐路 第二章 「若さ」について――誉池月 スペックではなく味わいの深さを/普通酒からの脱却/地酒蔵が生き残れる分水嶺/若き蔵元の奮闘/「若さ」=「稚さ」ゆえの力/地元で愛されなければ意味がない/抜栓後に幅と深みが増す 第三章 燗酒の逆襲――丹澤山 酵母より水で判断すべき/「冷酒」なんて論外の吞み方/「冷や酒」と「冷酒」/燗酒はおとなの愉しみ/大ヤカンの熱燗のうまさ/燗酒をこよなく愛する 第四章 地酒という生きかた――蓬萊泉 石橋を叩いても渡らぬ三河人/「機械化」で悪しき臭いを抑える/自社の酒を自社のスタッフが売る/日本酒全体の地盤沈下/徹底した地元志向 第五章 バランスの妙――まんさくの花 「酒の道のゴールは本当に遠い」/「この町で、この蔵で育ててもらいました」/「特定名称酒」へのシフト/「日本酒はバランスに尽きる」/蔵元と息子、そして杜氏/本当の意味で目覚めるべき時代 第六章 日々吞む酒とは――北雪 日本食レストランのオフィシャル〝SAKE〞/日本酒が演出する至福/日本酒よりもワインが飲まれている/手軽でおいしく高品質な「日常の酒」/ネット販売と通いなれた酒屋さん/うまい酒とうまい肴があれば 第七章 日本酒の会におもむく 見知らぬ蔵のうまい酒/蔵の数は愉しみのバロメーター/日本酒が観光資源になる日/女子だけの酒の会/日本酒をめぐるビジネスネットワーク/うまい酒は人を集め、人を動かす 第八章 福島の親分――末廣 「まさに八方ふさがりだった」/「風評被害、こいつにやられた」/地方の名士としての矜持と責任/金賞蔵数が七年連続日本一に/「ならぬことはならぬものです」 第九章 うまい酒をつくるということ――モルトウイスキー、クラフトビール 伝説の傑作シングルモルト/小規模蒸溜、人の感覚、じっくり熟成/個性で勝負するには、まず高品質を/人口七百人の村に醸造所/「自分たちの吞みたいビール」/日本酒は国際言語にはなれない?/わずか千二百しかない日本酒蔵 第十章 酒屋万流――花巴、アフス、伊根満開 室町時代に完成した醸造法/野生の微生物は力強く、やさしい/吉野杉の木桶樽での仕込み/新鮮な食べ物への強い想い/ワインと西洋料理のマッチング/「多様化し個性豊かでなければならない」/酸味がみせる味わいの広がりと深み/「いまの日本酒は日本の文化だと自信をもっていえますか?」/日本で海からいちばん近い蔵/伝統と挑戦を凝縮させた銘酒/その人柄が豊かな滋味を与える/「酒屋万流」と「同等一栄」 第十一章 文化をになう酒――大信州 日本酒は日本の文化である/淡々と日々の仕事を行い、重ねていく/薫りと五味が圧縮され球体となる/いい酒を醸せない蔵はトレンドに頼るしかない/「シャンパンにコーラ、これがアメリカなんだよ」/長野の風土が生む「天恵の美酒」/多様で豊かな世界に独自の情緒を育む 第十二章 吞み飽きしないうまい酒――土田麹九割九分【書き下ろし新章】 群を抜く濃艶な味わい/ゲーム会社から酒づくりに/日本酒は伝統工芸品/思いたったらすぐに走りだす/全ての銘柄を山廃の純米酒に/山廃を全廃して生酛に統一!/吞み手の感性と個性こそ