愛ではない。けれどそばにいたい。 少女誘拐事件の犯人とその被害者。 犯人は大学生19歳、被害者は小学生9歳。 でも、これは外側から見た説明に過ぎなかった。 本人たちにしてみればまったく違った関係性だった。 大学生は、少女しか愛せられない。 少女は、家庭にも学校にも居場所がない。 そんな2人が出逢ってしまい、惹かれ合う。 でも、事件のために引き裂かれてしまう。 15年後再会する。 2人はお互いの必要性を感じることになる。 でも、それは愛情ではない。 そんな2人を考えると何とも言えない気持ちになる。 多様性は口に言うのは簡単だが、理解して実行するのは難しい。 当事者の常識は世間の非常識。世間の常識は自分達の非常識。 小説の中では、多様性以外にも、厳格な教育、DV、性被害、シングルマザーなどを絡めて鋭く描いている。 凪良ゆうという作家の力量に驚かされた。