原田マハのデビュー作! 沖縄を舞台にしたピュアなラブストーリー。カフーとは、沖縄の方言でいい報(しら)せ、幸せのこと。 沖縄の情景がストーリーに合っていてとても心地良い。不器用な男性と突然島にやってきた謎の女性が繰り広げる関係性に吸い込まれていく。 始まりは、男性が北陸のある神社で絵馬に書いた「嫁に来ないか」に対して、女性が「私をあなたのお嫁さんにしてくだい」と手紙を送ってきたこと。 なかなか自分の気持ちを伝えられない男性。そして、何か重要なことを隠して素性を言わない女性。そんな2人の周りに絡んでくる幼なじみや島のリゾート開発がサイドストーリーとなって興味深く展開していく。 誤解とすれ違いで離れてしまう2人だが、その後の関係はどうなるのか、カフーは来るのか、その答えは女性から送られてきた手紙にすべてが書かれていて、最高のエンディングへと向かう。 原田マハには『本日は、お日柄もよく』や『楽園のカンヴァス』など名作があるが、このデビュー作はそれとは違ったピュアな作風がありとても良かった。
ギャングが主役の小説。ギャングとは本来悪党なのに、そんな感じが全然しないのがこの作品の特長。 軽やかな会話とテンポが魅力的。思いもよらない展開続きで面白い。サスペンスなのに極上のエンタメ小説! 嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女の4人組。このギャングのキャラクター設定がとても良い。 綿密に計算された計画でうまく銀行強盗ができる展開だったが、別の強盗に横取りされるという予想せぬ展開になる。 4人組はどうするのか?横取りされたお金を取り戻すのか?仕返しをするのか?何もしないのか?どんなエンディングになるのか早く知りたくなってページをどんどんめくっていく。 伊坂幸太郎お得意の伏線回収もお見事。最後はタイトル通りに決めてくれた。
「地面師」とは、他人の土地を利用して詐欺を働く人のこと。 この言葉は2017年に実際にあった事件で印象に残っている。 大企業を相手に高額な金額が動いたことで驚いた。 そして、2024年にNetflixで映像化された。 騙す方はうまく騙すことができるのか? 騙される方は逃れられるのか? そして、刑事は犯人にたどり着けるのか? このせめぎ合いがスリルがあった!
愛ではない。けれどそばにいたい。 少女誘拐事件の犯人とその被害者。 犯人は大学生19歳、被害者は小学生9歳。 でも、これは外側から見た説明に過ぎなかった。 本人たちにしてみればまったく違った関係性だった。 大学生は、少女しか愛せられない。 少女は、家庭にも学校にも居場所がない。 そんな2人が出逢ってしまい、惹かれ合う。 でも、事件のために引き裂かれてしまう。 15年後再会する。 2人はお互いの必要性を感じることになる。 でも、それは愛情ではない。 そんな2人を考えると何とも言えない気持ちになる。 多様性は口に言うのは簡単だが、理解して実行するのは難しい。 当事者の常識は世間の非常識。世間の常識は自分達の非常識。 小説の中では、多様性以外にも、厳格な教育、DV、性被害、シングルマザーなどを絡めて鋭く描いている。 凪良ゆうという作家の力量に驚かされた。
「春が二階から落ちてきた。」という印象的な書き出しで始まる。伊坂幸太郎を世に知らしめた最初の代表作! 春というのは、季節のことかと思ったが違った。兄弟の名で弟の名前だった。兄貴は泉水といい、2人揃って英語にするとspringになる。なかなか洒落が効いている。 でも、この兄弟は異父兄弟になる。理由は弟がレイプによって生まれた子だからだ。このことがストーリーの核となっていく。 遺伝子に優位性があるのか?家族の絆は遺伝子を超えられるのか?激しく揺さぶってくる。2人の兄弟の目的は実は一緒だった。エンディングに至るまでの過程は、実に感動的で文学的だと思えた。 遺伝子、グラフィティアート、放火、ピカソ、などなどいろいろな要素がストーリーを膨らませていく。登場人物の行動性には、独特の世界があり、小説をおもしろくさせてくれる。 伊坂幸太郎の小説には、いつもハッとさせられるセリフが散りばめられている。ひとつだけ挙げると、空中ブランコを楽しそうに飛び移るピエロを見て言った父親のセリフ「楽しそうに生きてればな、地球の重力なんてなくなる」
2022年7月奈良県で元総理が凶弾に倒れた。こんな出だしでストーリーが始まる。どうしても現実に起こったあの事件と重ねてしまう。でも、この小説はフィクションだという。 41歳の男性が現行犯逮捕された。ある宗教団体への恨みがあり、関わりのある元総理へ恨みの矛先が向かったという。ここまでは、現実の世界でも、小説の世界でも同じだ。ただ、その先の展開は、この作品では思いもよらない世界が描かれている。 新聞社襲撃事件、宗教団体、右翼、警察、防衛省、銃、スナイパー、政権与党、公安、ジャーナリスト、奈良、皇室、元号、さまざまな要素が絡み合って、事件の裏側を探っていく。普段の生活では考えの及ばない世界が繰り広げられる。最大の問題作と言って良いだろうね。 この小説の特長は、フィクションでありながら、現実との世界を行き来する錯覚に陥られることだ。時系列や登場人物に実際の事象があり、これはノンフィクションなのかと思ってしまう。それに、描写が緻密になっていて、ドラマや映画の映像世界を見ているような気分になる。とても読みやすくて一気に読めた。 柴田哲孝の作品を読んだのは今回が初めて。取材で裏付けられた事象を、見事な程に素晴らしい小説に昇華させている。読み応え十分だった。他の作品もぜひ読んでみたいと思う。
2025年の本屋大賞が決まった。作品は、阿部暁子の『カフネ』 とても深くて、人間味があって、やさしくて、せつなくて、温かくて、悲しくて、真っすぐな、とても素敵な小説だ。 薫子とせつなという2人の女性の関係を軸にストーリーは進んでいく。薫子は国家公務員で離婚したばかり、せつなは薫子の弟の元恋人で家事代行の仕事をしている。 微妙な関係が続く2人だが、ひょんなことから薫子はせつなの家事代行を手伝うことになる。そこで訪れる家庭では、老老介護、生活に余裕のないシングルマザー、ワンオペ育児で疲れている母親、妻に出て行かれた夫、などなど今の世の中でよく見聞きする事例の家庭が出てくる。 家事代行で、料理を作って、部屋を掃除をすれば、その1日だけでも生活に余裕が生まれる。その後の生活にも未来が見えてくる。おいしい料理や片付いた部屋が、いかに生活に潤いを与えるかよく分かる。 それ以外にも、不妊治療、LGBT、味覚障害、白血病など、現代の悩める問題を取り入れて、人の心を赤裸々に写し出している。悩ましくなってしまうが、正面から描いていて考えさせられる。 自分に対して、人に対して、心の葛藤をこれでもかと描いていて、とても心揺さぶられた。でも、読み終えて温かい気持ちになった。2025年の本屋大賞受賞作は、温かなパワーに満ちあふれている。
三浦しをんは、初めて読んだ『きみはポラリス』で感動させてくれた。次は本屋大賞受賞作のこの『舟を編む』を読みたいと思った。 ストーリーは、出版社の辞書編集部が、15年程の年月を経て新たな辞書を完成させるという壮大な内容になっている。辞書をつくるということが、いかに大変なことなのかよく分かった。 「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」 新しくつくる辞書の名前は『大渡海』 そして、「海を渡るにふさわしい舟を編む」と思いを込めた辞書編集部員。 とても美しくて良い言葉を使っていると感じた。 辞書をつくることが主題なので、ズシリとくる重量感を感じた。それに、言葉の持つ意味というか、言葉自体が持つ力があるのだということを知った。 他の小説には無いテーマで描かれていて、唯一無二の素晴らしい小説だ!
『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』に続く、殺し屋シリーズ待望の最新作。殺し屋シリーズなんて言うと、普通は非情で怖いイメージになるが、この小説はそうではない。ハードボイルドであり、エンターテインメントであり、そしてシュールな作風になっている。エンタメ・ハードボイルドという言い方がしっくりくるね。 ストーリーは、天道虫と呼ばれるとびきり不運な殺し屋が主軸となって進んでいく。ホテルの一室にプレゼントを届けるという簡単な仕事を請け負ったが、そう簡単に進まないのがこの天道虫の特徴。予想もできないおもしろい展開が、まさに伊坂幸太郎の世界。 登場人物がとてもユニーク。不運すぎる天道虫を筆頭に、どんなことでも記憶が残っている追われている女性、見た目重視の業者、両肩を脱臼させる業者、などなど。他の小説ではあまり登場しない個性豊かな面々が描かれている。 印象的なセリフがある。「幸運をつかむのは大変。ただ、失うのは簡単。恩知らずになればいい。人から受けた恩を忘れちゃうような人間は、運から見放されるらしい」伊坂幸太郎の小説には、いつもドキッとするセリフが散りばめられているから良い。 読み終えて、殺し屋が出てきたなんて忘れらるくらい、気持ち良い終わり方になっている。不運と言われつつ生き残った天道虫。となると、次回の登場、次回作を楽しみに待っていたい。
柚月裕子は『合理的にあり得ない』で楽しませてくれた。次はこの佐方貞人シリーズを読みたいと思った。そして、その1作目にこの『最後の証人』を読んだ。 主人公は弁護士で、殺人事件の裁判で検事と対峙することになる。構成は、プロローグ、公判初日、公判2日目、公判3日目、判決、そしてエピローグになっている。 単純な推理小説と思っていたが、まったく違っていた。ひとつひとつストーリーが進みにつれて、次はこうなるだろうと予想しても、ことごとく違うストーリーを描いていった。 特に、被告人と被害者の描き方にはとても驚かされた。ネタバレになってしまうので、詳しくは言えないので、本作を読んで欲しい。そして、最後はカギを握っていた「最後の証人」で見事なエンディングを迎えた。 推理小説は、結末を迎えるといろいろな感情が生まれる。真実を知って悲しい結末を迎えたりもする。この作品でも、結末の真実を知って、少し悲しい気持ちにもなったが、それを上回る幸せ感を感じ、読後感を良いものにしてくれた。 佐方貞人シリーズは傑作の予感がした。ぜひとも全作品を読みたいと思う。
青山美智子の小説を読むのは2作目となる。1作目に読んだ『お探し物は図書室まで』が最高に良かった。この作品でも、また感動できたら良いと思って読み始めた。 構成は、プロローグ、4話の本編、エピローグからなる短編小説になっている。 1話、2話まで読んで、普通に良い小説だなと感じた。ただ『お探し物は図書室まで』と比べると、少し物足りない気もした。 でも、3話目を読んで、ギクッとして、4話目を読んで、ドキッとして、そしてエピローグを読んだら、感動が爆発した! 2話目まで読んで、普通に良い小説と言ったが、訂正したい。この『赤と青とエスキース』は最高に良い小説だった。 タイトルにある、赤と青の色をうまく表現して描いている。近づいたり離れたりする登場人物の人間模様を、赤と青が織りなすように、1枚の絵画を完成するように描いている。芸術的な小説だ。 エスキースとは下絵のことだという。本番を描く前に構図を取るデッサンみたいなもの。読み終えてエスキースという言葉を選んだ意味が分かった気がした。 登場人物それぞれには、仕事、恋愛、人生、身体に、いろいろな悩みがる。倒れそうになると、背中をうまく支えながら、柔らかく前に押してくれる。こういう描写がとても上手い。青山美智子独特の描写と言っても良いだろう。 青山美智子は、とても素敵な作家だと、改めて思った。これからもたくさん作品を読んでいきたいと思う。
そんなに泣かせないでよ! と、言いたくなる感動する小説だ。 『ツナグ』の続編になる。 死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口、それが使者(ツナグ)。 死者と会うこととはどんなことなのだろう? どうして会いたいという人がいるのだろう? 心残りがあるの?と思ったけど、そんなことでなくもっと深い内容になっている。 今回は続編ということもあり、使者(ツナグ)のプライベートな部分も出てきて興味深かった。 使者(ツナグ)はこの先どうなるのだろう?さらに続編を期待したくなる!
読むのが止められなかった。夢中になった。やはり、大沢在昌は良い! 3年前の殺人事件の重要参考人からのメールで始まる。いくつかの疑問点を提示しながらストーリーが進んでいく。ベテラン刑事と若手刑事の交互の視点が良い。 重要参考人が命を狙われたり、警察内部に内通者の可能性があったり、刑事・佐江と地元警察の攻防があったり、近づくようで近づかない事件への真相。 そして、最後は思わぬ真実に唸らされた。スピード感があって読み応え十分だった!
時効まで24時間!事件はどうなるのか? ルパンに、3億円事件に、思いもよらぬ事実が出てきて、推理の行方が面白くなっていった。 朝から1人の容疑者の取調べから始まり、2人3人の取り調べとなっていき、事件は解決するのか、それとも未解決で終わってしまうのか、なかなか焦らせてくれるストーリーで進んでいった。 最後は、伏線回収も見事に決まり、事件は•••。 (気になる人は読んでね!) この作品は横山秀夫の幻のデビュー作という。とても見事な処女作品だ。
世界のオザワ!! 日本を代表する指揮者の小澤征爾さんが2024年2月に亡くなられた。 いろいろな音楽家、ミュージシャン、アーティストが海外で活動しているが、海外の人達から本当に認知され、初めて「世界の」と言えるのは、小澤征爾さんだと思う。 この『ボクの音楽武者修行』という作品は、小澤征爾さんが日本から船で単身ヨーロッパに渡って、世界的な指揮者になるまでの自伝になっている。 クラシックの指揮者なら、さぞスマートな経歴なのだろうと思っていたが、まったく違っていた。とても泥臭くエネルギッシュで開拓者のような道筋だった。 海外旅行がままならない時代にひとりヨーロッパに渡り、音楽という自分の才能をぶつけていく姿に引き込まれる。第一人者、開拓者というのはこういう人のことを言うのだろうと思う。 一度だけ生演奏を聴いたことがある。長野県松本市で行われたコンサートだ。「ラプソディ・イン・ブルー」を聴いた。神々しい指揮姿と圧倒的な演奏が今も心に目に焼き付いている。忘れられない貴重な体験をした。 小澤征爾さん、ご冥福をお祈りします。
最後まで読みたくないと思った! 犯人は最初からわかっていた(つもりだった•••)。想像できないトリックで犯人は警察を見事に騙していた。そして、読み手をもそのトリックで翻弄してくれた。 読み始めは、単純な推理小説と思った。ところが、ストーリーが進みにつれ、それは違うことに気付いた。結末近くになると、何となく展開がわかってきたが、悲しい結末になるのではと思い、このまま読むことを躊躇してしまいそうだった。 そして結末は、トリックの壮大さに驚き、悲しい決着に息を呑んだ。 救いというわけではないが、湯川の人間味が出ていて良かった。
『グラスホッパー』『マリアビートル』に続く伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ3作目。 読み始めると前2作とは違った感じがした。前半は少し単調な気がしたが、後半から結末にかけては、伊坂ワールド全開で、切なさがたまらなかった。殺し屋の家族愛とはこんなものなのかと見せつけられた。主人公の家族や周りの登場人物も良かった。
東北新幹線の車内で展開される殺し屋を中心にしたストーリー。 殺し屋が芸人かと思うくらいのしっちゃかめっちゃかな展開で進んでいく。話についていくのがやっとの、伊坂幸太郎ワールド全開の超エンターテイメント小説になっている。こういう小説は伊坂幸太郎にしか書けないだろうね。次は『AX アックス』を読みたい!
2023年(単行本フィクション)、2024年(文庫)でベストセラーになった人気作! 家の間取りにおかしな空間がある、窓の無い部屋がある、などなど普通では考えられない家になっている。それを明らかにしていくことでストーリーが進んでいく。でも、それを明らかにしていくと、おどろおどろしい世にも恐ろしい結末が待っていた。この作品は、フィクションと思っていたが、まさか実話ということはないよね!?
2024年の本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』の続編が刊行されている。タイトルは、『成瀬は信じた道をいく』 前作がめちゃくちゃおもしろかっただけに、今作はどうなるのか少し心配だった。でも、そんな心配は必要なかった。またまためちゃくちゃにおもしろかった。前作を上回る程の内容だ。 5話からなる作品になっていて、それぞれに濃いキャラクターが出てきて成瀬と関わっていく。小学生がゼゼカラ(成瀬)に憧れ、父親が成瀬の将来に気を揉んで、クレーマーに関わったり、びわ湖大津観光大使に選ばれたり、最後は行方不明になって総出で探すことになってしまったりと、予測不可能な展開の連続で楽しませてくれた。 この作品のテーマは「多様性」と感じた。それも、力強い「多様性」だと思う。周りの人達は、普通で考えれば成瀬とケンカして離れていく関係性だが、そうでないところにこの作品の絶対的良さがある。自分の良いと思う道をひたすらに歩んでいく、凛として颯爽とした気持ち良さがある。 今作では高校生から大学生になった辺りのストーリーになっている。やはり、その続きを期待してしまう。次があるなら、大学生から社会人になるまでの成瀬あかりをぜひとも読んでみたい。
記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦とその息子による日常のやり取り。どんなストーリーになるのか予想ができなかった。もしかして、悲しい結末になるのかと思ってしまった。でも、良い意味でその予想は外れた。 ページをめくるたびに3人の関係性が少しずつ深くなっていく気がした。博士の記憶のことを考えればそうでないのかもしれないとも思うが•••。でも、明らかに関係性は深くなったと思いたい。80分しか記憶が持たない博士を相手にして、家政婦とその息子が気持ち良く接しているのが良い。読み終えて、何とも言えない温かい気持ちになった。 ところどころに数学の難しい公式が出てくるが、分かりやすように上手く説明している。10代の頃にこの本を読んでいれば、もしかして数学が好きになったかもしれないね
デビュー作にて最高傑作!読み終えたら呆然とした。こんなストーリーだったなんて。島が舞台になり、予告された事件はホントに起こるのか?と思いながら読んだが、事件は発生していく。犯人はわからないまま。そして、後半の一行を読んで、こんなことになるのかと、言葉が出なかった。島と本土で同時進行する展開もおもしろい。そのせいか真犯人は〇〇と予想したが、見事にハズれてしまった。新本格ミステリの源流。スゴすぎる!!
誰でも、仕事、家庭、結婚、人生、いろいろなことに悩みがあり、普段の暮らしを良くしたいと思うが、なかなか新しい一歩を進むことができない。そんな人たちが青いスーツケースで旅することによって、新しい出逢いが生まれ、新しい挑戦をすることができる。そんな幸運を運んでくれるストーリーになっている。この作品を読めば、青いスーツケースを持って、旅に出たくなるよ!
とても良い小説だ! 17歳の高校生が、旅先で出会う人たちとの交流で感動が生まれる。 自分だけでなく、出会った相手にも物語があって、感動が2倍になる。なかなか泣かせてくれる。 おもしろいストーリーがいっぱいで、感動も楽しさもあふれている。
こんな素敵な出会いがあるなんて!! from E. to E. with love エリザベスとエドワードが、運命に身をまかせるように、出会いと別れを繰り返す。 「私たちは何度も出会っている。結ばれることはない。でも、離れた瞬間から、会う瞬間を待ち続けているーー生まれる前も、死んだあとも。理由なんて分からないわーーでも、会いたかったのよ。」 この印象的なセリフが、この作品のすべてを言い表しているような気がする。 時間も場所もそれぞれ違うときに出会いがある男女。こんなストーリーがあるの⁉︎って思う程の展開に驚いてしまう。最後は思いもよらない良い終わり方になっている。恩田陸の描く世界に言葉が見つからない。
2019年本屋大賞受賞作。たまらなく良い小説だった! 主人公は、父親が3人、母親が2人、家族の形態は7回も変わった、17歳になる高校生。切なくて悲しい内容になるのかと思っていた。でも、違った。とても幸せに満ちた温かくなる小説だった。 血の繋がっていない親の方が人数も時間も多くなるので、普通で考えたら、つらい思いをしたり、寂しい気持ちになったり、悪い道に進んでしまうことが考えられる。当然所々では寂しさにつらくなったり、人と違うことで戸惑うことがあった。でも、全体を通しては、幸せに満ちた温かい人生を歩んでいる。それは、なぜかと言ったら、たくさんの親たちが、タイトルのごとく、代わる代わる主人公に愛情を注いでいたからだと思う。 この作品は構成がとても良い。序章があって誰かの描写をしているのだが、読み始めのときはよくわからなかった。だけど、この序章は終章につながる大切な章だったことが後になってわかる。主人公が高校生の時から始まっていくので、実際にどんな家庭環境だったかというのが、読みながら疑問になっていく。知りたいと思った場面で、ドンピシャで上手く年齢を遡ってその当時の状況を説明してくれる。うまい構成になっている。 印象的な場面がある。ある親が、主人公を迎え入れて感じた言葉「明日が二つになる。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくる。親になるって、未来が二倍以上になることだよ。」親になるって良いことだよね。 とても素晴らしい作品にめぐり逢えた。瀬尾まいこの作品は初めて読んだ。また別の作品もぜひ読んでみたいと思う。
少し疲れた女性が旅に出る。そして、旅先での出逢いに新しい自分を見つける。 4話からなる短編集それぞれの旅に、ほろりとする。 印象的な場面や言葉がたくさんある。 1話目(さいはての彼女) 秘書の手違いか故意かで、沖縄に行くはずが真逆の北海道に行くことになる。 そこから、おもしろい旅になる。強気な女性経営者とハーレー乗りの女性との出逢いがとても良い。 2話目(旅をあきらめた友と、その母への手紙) 1人の旅だけど、1人じゃない。 3話目(冬空のクレーン) どんな大それたことでも、誰かがそう考えるところから始まるんじゃないかな。 4話目(風を止めないで) ナギ、自分で引いた「線」を超えていけ。 この風、止めないでね、これからも、ずっと。 全編通して、肩書を外して、ひとりの人間として、いかに良い生き方をしていくかを投げかけている。 こんな良い小説を読んだら、旅に出たくなるね!
SNSで人気の作品、やっと読めた。噂通りの良い作品だった。 主人公のバツイチ女性が、見守り屋という、夜に個人宅に行って、子供や老人やペットたちを相手にして、話を聞いたりお世話をしたりする仕事をやっている。 依頼人はちょっと訳ありの人が多く、それぞれの事情が切ない感じがしてくる。そして、主人公の女性も、離婚したため子供と一緒に暮らせない事情があり、こちらも切なさがある。それでも、うまく心情に沿った流れで見守り屋という仕事が完結している。 でも、それでは切ないだけの良い小説なのだけれど、それを上手く中和させるように、ランチとお酒が出てくる。美味しいご飯に美味しいお酒が出てきて、実際にそのお店に行きたくなってしまうような美味しさ感がある。良いバランスでストーリーがまとまっている。 続編もあるという。ぜひとも読んでみたいと思う!
後悔してることはあるよね。 あの時、こう言えば良かった! あの時、こうすれば良かった! 二度と戻れないあの時に戻れるなら、やり直したいことはある。 そんなことを可能にしてくれるストーリー。 泣けてくるよ!
冬はハードボイルドを読みたいね!! 寒い季節に読むには手頃な小説だ。短編になっているので読みやすい。正統派ハードボイルド、ジョーカーという名の主役、温泉街のハードボイルド、SFハードボイルドなどなど、、魅力あふれる短編集。 『再会の街角』は大沢オールスター出演のユニークな短編になっている。大沢ファンにはたまらない!
辻村深月の直木賞受賞作。辻村深月は人の嫌な部分を描くのが上手なんだと思う。心の中や感情の200%を吐き出してしまうような表現力だ。この小説が楽しいかと言えばそうではないし、感動する小説かと言えばそうでもない。見たくないものを見せられたような小説だ。それでも、その人の嫌な部分を芸術に昇華させた見事さが凄い!作家としてのあふれんばかりの才能を感じてしまう。
妊娠、母との関係、恋愛、仕事、夫婦などなど、女性が岐路に立つ場面での物語を優しく繊細に描いている。それは、人生の寄り道だったり、女性としての自立だったり、夫婦の互いの感謝だったり、そして再出発の背中を押してくれたりと、気持ちが温かくなる内容だ。短編小説で7話収録されている。どれを読んでも中身が濃いので、1話だけで読んでも良いくらいだ。読んだ後には、そっと一歩踏み出している気になる。やはり原田マハは良い小説を書くなぁ〜!!
柚月裕子は以前から読みたいと思っていた作家だ。『孤狼の血』か『慈雨』を選ぼうと思ったが、読みやすさから『合理的にあり得ない』を手に取った。この作品は、見事なくらいにスカッとする。元弁護士が、どんな案件だろうとお見事に解決する。一話完結の短編集だけど、中身が濃い。続編もあるので読んでみたいと思う。
気楽に読めて楽しい!そして、クセになるおもしろさがある!事件の捜査にあたるのは、宝生麗子という資産家令嬢の刑事だが、謎解き自体は執事がするので、主役は執事ということになるのかな!?という設定。事件に対して、どうしてそこまで明快に謎解きができるのかと、うなってしまう程の見事な推理力を披露してくれる。読んでいくと、途中の事件の経過より、謎解きを早く披露してと思ってしまう。次から次へとページをめくってしまう楽しい小説だ。
この小説を読もうと思ったのは、タイトルが気楽な感じがしてさっと読めると思ったから。勝手な想像で、主人公がイヤな仕事に一区切りつけて、残りの時間をバケーションみたいに気楽に過ごす、そんな内容をイメージしていた。 でも、読んでみるとぜんぜん違った! とにかくあり得ない設定から始まる。男が悪い稼業から足を洗う条件として、適当な携帯番号にメールをして、友達になれたら足を洗えるという、ほぼ100%不可能な条件だった。 ところが、そのメールを受けた中年男性は、離婚することになった家族最後の日だった。こともあろうか、そのメールにOKの返事をして、ストーリーは始まっていく•••。 「なんじゃこりゃあ!!」と言いたくなった。そこから奇想天外なストーリーが、あっち行ったり、こっち来たりとしながら、コロコロと転がっていくように面白く展開していく。最後はハードボイルドで終わるのかな?という感じだ。 所々に洒落たセリフが散りばめられている。 ひとつ挙げると、 「過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。車だって、ずっとバックミラー見てたら、危ないじゃないですか。事故りますよ。進行方向をしっかり見て、運転しないと。来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ」 他にも伏線回収的な仕掛けが散りばめられている。 めちゃくちゃであり得ない小説なんだけど、おもしろい! まいったね、伊坂幸太郎!!
洒落で、純で、笑える、そんな感じが良い。こんな別れがあるなら、ある意味素敵だね。五話目の、子供の頃パンになる夢の伏線回収には、うるっときた。伊坂幸太郎はクセになるね!
これが伊坂幸太郎の世界だ!!ハードボイルドでもあり、ミステリーでもあり、エンタメでもあり、ひとつには収まらない世界観がある。押し屋なる殺し屋、自殺専門の殺し屋、若い殺し屋など、そういう業界の人物が、ハードにマンガチックに交わって、ストーリーを盛り上げていく。いなくなって欲しいと思っていた登場人物が、キレイにいなくなったので、スカッとした読了感がある。伊坂幸太郎中毒になってしまうね!
『ピットフォール』『ラットトラップ』に続く、探偵ジョー・スナイダーが主人公のニューヨークを舞台にしたハードボイルド小説。 依頼内容はメジャーリーグの野球選手の素行調査。ヤンキースやドジャースが出てきてなかなか面白い。今回はロサンゼルスにも出張している。 調査対象の選手は、良いのか悪いのか、なかなか分からない。それでもって、独身なのに子供やその母親の影が出てきて困惑させる。そんな中、その子供が誘拐され、調査中の選手が大ケガをさせられてしまう。そこから、ストーリーは一気に動き出す。 探偵のジョーは、身代金の運搬から事件の捜査にと、深く関わることになる。犯人の真意が分からないまま、怒涛のクライマックスを迎える。 前作ではアシスタントだったリズが、独立して活躍している。それでもジョーの件では大きく関わってきて、ストーリーを膨らませている。 主人公の探偵ジョーは、55歳の設定になっていて、仕事の引退、最後の女性、終のすみかなどなど、気持ちの整理をつけようとしているかに見えて、哀愁を感じさせてくれる。 でも、まだ炎は消えていない。ジョーのその先を読んでみたいと思う。このニューヨークハードボイルド3部作は、今作で完結とのことだが、読者としても、まだ炎は消えていないので、ぜひ続編を期待したい!
探偵、ニューヨークときたら、ハードボイルドだ! 堂場瞬一が作家20周年を記念した書き下ろしの作品。 ニューヨークが舞台で1959年の時代設定ということもあり、いつもの堂場警察小説とは違い、少し違和感があったが、読んでいくうちに慣れていき、ニューヨークの情景も浮かんできて楽しめた。ロックロール、ヤンキース、ブロードウェイ、ダイナー、イーストリバーなど、ニューヨークを感じる単語が彩ってくれる。 最後は悲しい結末になりそうだったが、「ハードボイルド=やせ我慢の美学」を地で行くような終わりで、うまく締めてくれた。
心につき刺さる!! この作品は、恋愛小説なのか、ミステリー小説なのか、読んでる途中に考えていた。 しかし、読み終えてみると、もっと大きなくくりの小説なんだと思った。 何気なく生活している中で、人それぞれの考えがあり、悩みがある。そんなことを明らかにして、読み手に突きつけてくる。特に恋愛や結婚ということになれば尚更かもしれない。自分の本当の気持ちを明らかにせざるを得ないよと、問いかけられた気がした。 坂庭真実が逃避先で「私も行けるかな、次の場所」とつぶやいた。 つい「行けるよ」と言いたくなった。 解説が朝井リョウというのもおもしろい。 辻村深月を読むのは、『ツナグ』に続いて2作目になる。まだまだ読み足りない気がしている。
せつなくてたまらない!!これが小説であって欲しいと思った。他のクジラが聞き取れないという52ヘルツの鳴き声。その鳴き声を発しながら孤独にさまよう52ヘルツのクジラ。実際に52ヘルツの鳴き声が聞こえてきたら自分は何ができるのだろう?児童虐待、DV、トランスジェンダーなどを要所要所に描いている。大きな愛とやさしさが必要だと思った。そのときはこの本を読み返したいと思う。最後は未来が見えて良かった。
今までにないダークな部分を見せたい!という原田マハの意欲作。ノワール小説で短編集。ノワールはフランス語で黒の意味。帯には、禁じられた遊び、爛れたエロス、閃く殺意の文字が書かれている。まさに黒い側ということなのだろうか!? ”禁断の書”と銘打たれた原田マハの短編集。 「深海魚」 高校生のいじめや性愛、そして殺意まで描いている。 ーー暗闇の中、奥深く、生き抜けるのだろうか? 「楽園の破片」 かつての不倫相手との講演会に向かう美術の専門家の女性の性と愛の葛藤を描く。 ーータイトルが良い! 「指 touch」 私大の日本美術史博士課程2年生の女性の思惑に震える。 ーー女性目線の愛欲にゾクッとさせられる! 「キアーラ」 イタリアの文化遺産修復の現場を舞台に、過去と現在が幻想的に交錯する。 ーー女性の欲望はアートを超えるの? 「オフィーリア」 芥川龍之介『地獄変』へのオマージュである。 ーー原田マハ風『地獄変』は良いね! 芥川も読んでみたくなった。 「向日葵奇譚」 1枚の写真から、ゴッホの人生が現在に入り込み、人を幻惑する。 ーー究極のゴッホ愛︎ !? 読む前は、もっとドロドロとしたゲスな嫌なモノを見せられるのかと思っていた。読み終えてみると、愛欲、性欲、不倫、いじめ、殺意など、いつもの原田マハにはない世界が描かれていて違う作家なのかとも思ってしまうが、短編集ということもあり想像以上に黒い感じはしなかった。黒いというより、アナザーサイドの原田マハと言う方が良いかもしれない。今度はぜひ長編でのダークな世界を読んでみたいと思う。 原田マハは、インタビュー記事で「作家として、絶対に一度はダークな部分を書かなければ、コンプリートしないと思っていました。」と語っている。 原田マハの作家としての矜持、姿勢、生き方を好きにならずにいられない。これからもずっと原田マハの作品は読み続けたい。
主人公は新聞記者。作者の堂場瞬一も元新聞記者。なら、読むしかないよね!そのせいもあり、ところどころに新聞の役割、マスコミ報道の使命、権力との対峙などがメッセージみたいに見え隠れする。それが何だか良い。季節が夏の設定のせいか、手に汗握る場面が多く、全体的に汗の匂いを感じる。特ダネを決めて⁉︎終わったと思いたいが、この作品はメディア三部作として、『警察回りの夏』『蛮政の秋』『社長室の冬』と続く。好きなシリーズだ。
朝井リョウの作品を読むのは『何者』に続いて2作目となる。今回もまた心をエグられてしまった。朝井リョウという作家の奥深さに驚嘆するしかない。頭の中で考える理解と心の中で湧き出る感情とを行き来しながら、どちらも問われているような感覚になる。「多様性」という言葉に本当に「多様性」はあるのだろうか?と思ってしまった。
️主人公の公安警察OBが病院内の揉め事を颯爽と解決する。政治家の隠密治療、モンスターペイシェントによる院内暴力、病院内では大小さまざまな事件が起きていて、これは現実に起きているのか、それともフィクションの世界なのか、スレスレのストーリー展開がおもしろい。現実でもこんな院内刑事が活躍してくれたら良いね。
公安警察を主人公とした小説!とても興味深くて新鮮だった。もしかすると初めてだったかもしれない、公安警察の小説は。今まで警察小説と言えば、捜査1課が主流で、公安ではない(一般のと言って良いかわからないが)警察が主流だったと思う。それにストーリーの流れでは公安を敵対視していることが多い。でも、この小説は、著者が公安警察出身ということから、フィクションだとしても、内部事情をこれでもかと詳しく描いていて唸らされた。公安警察とはこんな世界だったのかと思い知った。濱嘉之のこの『警視庁公安部・青山望』シリーズはおもしろい!!
警察小説好きにはおすすめの1冊。著者は警察出身でこの作品がデビュー作。警察内部の描写が詳し過ぎるくらいに描かれている。警察組織はこうなっているんだなと感心してしまった。実際の出来事と似たようなストーリーがあり、本当はこうなのか??と思ってしまうところも興味深い。本作のシリーズや他のシリーズもあり楽しみな作家だ!
星新一を読めば、一服の清涼剤みたいなさわやかな気持ちになる。風刺の効いたユーモアがクスッとさせてくれる。何と言っても「盗賊会社」なんていうタイトルが良い、泥棒が事業だもんね。何十年も前の作品なのに、今の世の中にも通じるような内容も良い。1話目の「雄大な計画」が特に印象に残っている。
恋愛の達人になった! そんな気になる、素敵な小説だ。 男と女、女と男、男と男、女と女。 思いが結ばれたり、届かなかったり、秘めたり、打ち明けたりと、いろいろな形の恋愛を描いている。 恋愛が星になっているような世界観が良い。 11編の短編集になっていて、「骨片」と「冬の一等星」が特に印象に残った。
まいった、何なんだこの小説は!! 最初はウブな男子大学生の純愛ストーリーかと思ってたら・・・。 それが、だんだんとワルい男に変貌していき、最後(問題の最後から二行目)には肘鉄を食らわされた、そんな単純なストーリーなのかと思ってた。 でも、これでは前評判とは違い物足りないと思って、インスタやネットで確認してみると・・・。 side-Aとside-Bには意味があったのだと納得いった。(詳しい内容は本を読んでね!) 「夕樹」という名前の人が「たっくん」と呼ばれていたら気をつけなきゃいけないね・・・。 それに、作者が男性だったとは、 「乾くるみ」ーー恐ろしい、何度騙されるのか!!
手のひらでノートの背中をささえ、最初の白いページをひらいたそこに、すべて真夜中の恋人たち、と書いた。 夢はいつもおなじだった。 まるで恋人のように冗談を言って笑いあったり気持ちをたしかめあったりして楽しいときを過ごしていた。 肌と肌がふれることがこんな感触のするものなのか・・・。 体温を、指さきでなくお腹や背中といったひろさで受けとめることが・・・。 何度でも思わずにはいられないほどの快感にうっとりとゆれ・・・。 すきな人の目をこんなに近くでみつめることがこんなにも鮮やかでやさしく、体のいちばん奥のあたりからうまれかわるような思いをするものなのか・・・。(本文より) 真夜中に光が見える。 それは、きれいな涙だろうか? それとも、それが恋なのだろうか? 『すべて真夜中の恋人たち』 ーー川上未映子が描く繊細で美しい世界がある。
好きだとか嫌いだとか、何か伝えたいなら、そういう全てを、伝えるようにしてほしい。じゃないと、私みたいにいつの間にか死んじゃうかもしれないよ。 いずれ失うって分かってる私を「友達」や「恋人」にするのは怖かった。 17年、私は君に必要とされるのを待っていたのかもしれない。 私と君の関係は、そんなどこにでもある言葉で表すのはもったいない。 「君の膵臓を食べたい。」 住野よる『君の膵臓をたべたい』ーー本文より。 どれだけ涙を流せばいいのだろう。 すべてを読み終えて真っ白な状態になった。 純粋な恋愛、永遠の青春、簡単な言葉では説明できない尊い世界がある。
先を読むのが怖くなった!どんな結末が待ってるのだろう?それでも読んでしまう恩田陸の魔力。
涙があふれて止まらない!そんな場面が何回も出てくる。あんまり泣かせてくれるなよ!と言いたくなった。死んだ者と生きている者が会うということはどんなことだろう?心残りみたいな内容かと思ってたが、もっともっと深い内容だった。5話構成で1話ごとそれぞれ独立した内容だが、それを最後の5話目で完璧にまとめ切っている。スゴい作品だ!
強烈な印象が残った!200%の力を振り絞って、ナイフで切り裂かれたような・・・。大人でなく学生ならではの本音のやり取りがそう感じたのかもしれない。心をエグる作品だ。主人公・拓人が、最後の面接場面で、「短所は、カッコ悪いところです。」「長所は、自分はカッコ悪いということを、認めることができたところです。」こんなセリフで終わる。たぶんこの先うまく成長していけるのだろう?と、最後は何となくホッとさせてくれた。あと、サワ先輩という先輩学生が、良い味を出している。
ほのぼのとした楽しい小説♪気軽にサラッと読める本を探していたら、目に留まって読んでみた。予想をはるかに超えた良い内容になっている。社会人1年目となる主人公が和菓子屋で奮闘する姿が微笑ましい。和菓子の美味しさやそれにまつわる知識がつまっていてためになる本でもある。この作品を読んだら、和菓子を食べたくなること間違いなし!
たまらなく良い小説だ!阪急電車今津線だけで繰り広げられる人間模様。登場人物それぞれにドラマがあり、それが交差して、そして昇華される。ひとの基本的なことに立ち返させられる、ほのぼのと感動する作品になっている。
読み応え十分の本格派ハードボイルド小説だ!探偵が主人公で、行方不明のルポライターを捜すことがストーリーの軸となる。正体不明の男性、資産家、ルポライターの妻、さまざまな依頼者が登場して、始まりから困惑させてくれる。じっくりと読んだ。遠回りをしているように感じるが、少しずつ少しずつ、ストーリーは確かに進んでいく。それは、エンディングを楽しんでくれよと言わんばかりに、いろいろな仕掛けが散りばめられている。主人公の私立探偵・沢崎のセリフ回しや醸し出す雰囲気がアメリカン・ハードボイルドを思わせてくれる。両切りのタバコ、古びた愛車ブルーバード、事務所は西新宿、細かな描写に特徴が反映されている。エンディングは、東京都知事狙撃事件が大きく関わってくることになる。二重三重に絡み合ったストーリーが見事に完結する。ハードボイルドの余韻を感じて読み終えることができた。この私立探偵・沢崎の作品は、シリーズとなっているので続編も必ず読んでみたい。
足の捜査を中心にする刑事と資料重視の捜査をする刑事とが、いがみ合いながらも犯人に近づいていく。静と動、水と油の二人の刑事が事件を解決するストーリーが良い。パズルをピタッとはめるような展開がお見事としか言いようがない。堂場瞬一の中で好きなシリーズのひとつだ。
堂場瞬一を読み始めたキッカケは、好きな大沢在昌の作品をほとんど読み切った時期があり、他の作家の作品をいろいろと読んでいた。何冊かおもしろい作品があっても読み続けられる作家は多くない。でも、堂場瞬一は読み続けられる数少ない作家と感じた。主人公の刑事・鳴沢了はストイックで頑固で一直線な刑事だ。最終的に事件解決につながるが、その過程で職場や家庭の摩擦が多く起きる。それが良くも悪くも刑事・鳴沢了の特徴となっている。刑事・鳴沢了シリーズの1作目。堂場瞬一史上売上No.1の警察小説。そして、堂場瞬一を語るには重要な1冊だ。
前作『ドミノ』の続編となる作品。またまた、めちゃくちゃおもしろい!まったく無関係な場所から、まったく無関係の人達が 、まったく違う目的なのに、最後は大団円を迎える。タイトル通りにドミノが倒れいくようなお見事な展開がたまらない。前回の舞台は東京駅だったが、今回は上海が舞台となっている。驚いたことに前作の登場人物がほとんど出てきていることにはビックリした。舞台が違うのに、そんなことができるのと思うかもしれないが、それが可能になっている。登場人物はバラエティーに富んでいて、それぞれの特徴が凝っている。普通や普通じゃない?OLにサラリーマン、ハリウッドの有名映画監督、料理長、風水師、美術品バイヤー、動物園の飼育係、上海警察署長、香港警察、テレビキャスターなどなど。それに、動物の登場が良かった。パンダ、イグアナ、ダックスフンド。動物については、とてもユニークな描き方をしているので、実際に本を読んで確認して欲しい。恩田陸の描く、あり得ない内容の、超絶おもしろエンタメ小説を堪能して欲しいね!
不思議な世界に連れていかれた。人々の暮らしの中で本当に大切なことをさりげなく表現している。実際に常野一族があって今自分たちの近くにもいるのではないかと思ってしまう。やさしさが横たわっている良い小説だ。いつも恩田陸の作品には心奪われてしまう!
宮下奈都のデビュー作。上質な難解さがある。調味料を付けずに素材の良さだけを活かした料理と言ったら良いのだろうか。記憶ができない女性と男性との二人の生活。そこに新しい世界が築けられるのか?でも、タイトルの「静かな雨」のごとく、じわりじわりと地面にしみていくように二人の世界が築けられていく。この作品は読んだだけでも価値があると思った。それは『羊と鋼の森』を始めとする感動小説を世に出していく作家の原点だから。
宮下奈都の真骨頂と言える素敵な小説だ。平らな地面をゆっくり歩いていたのに、気がついたらさわやかな景色の見える山の頂上にいた。そして、その道のりもまだまだ素敵な景色が続きそうな・・・。ひとりの女性の心の中をとても丁寧に表現していて、中学生から社会人になるまでの成長過程をせつなくも鮮やかに見事に描き切っている。読み始めたときは、何か苦しい感じがして、この小説はハズレなのかと思った。でも、それは間違いだった。主人公の成長に連れて、ストーリーは静かに、読み手を佳境へと誘ってくれた。主人公の女性が、仲良くなる男性と、高校生の頃通った映画館ですれ違っていたり、実家の骨董屋に来ていたという場面はとても良かった。
「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。」(本文より) 永遠の青春小説だ!恩田陸という作家を知ったのは本屋大賞を取ってからだったと思う。何冊か読んでいるが、一番に挙げる作品はやはりこの作品「夜のピクニック」。高校生が一晩かけて80キロを歩くというイベントに高校生男女が繰り広げる青春のやり取り。心の葛藤をこれでもかと描いている。恩田陸ってスゴい作家だなって思った!
アート小説の最高峰!!美術が主題になり、ミステリーの要素が絡み、男女のしがらみもあり、この作品を読まずして原田マハのことは語れない。原田作品の中でも特別な作品だ。ルソーが出てきて、ピカソが語りかけて、史実なのか、フィクションなのか、その境を超えて読み手を誘ってくれる。美術の楽園を歩いているみたいで、まさに『楽園のカンヴァス』だ。
スケールが大きい!史実に基づいたフィクションということだが、1930年代に日本製の飛行機で世界一周する、女性パイロットが活躍するストーリー。原田マハの著書で初めて読んだ作品。飛行機を題材にした本を探していてこの作品を選んだ。この作品をきっかけに『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』などの原田作品を読んでいくことになる印象深い作品。
タイトル通りの重い内容になっている。2つの別々の事案が、だんだんと互いに近づいていく。呼吸を忘れるほど集中して読んでいった。派手なアクションシーンのない、心理描写重視の映画のようだった。まさに、渋谷を舞台に“現代”を描ききった傑作巨編!
佐久間公シリーズ幻の処女長編小説。幻と言われるのは長く絶版の時期があり読者熱望により復刊したため。佐久間公シリーズが好きなら必読の作品だ。主人公の動きがストレートで大胆で、大沢作品初期の感じがして良い。
予期せぬ事態と予期せぬ真実の連続に引き込まれてしまった!佐久間公シリーズ初の長編小説は、公の親友沢辺が失踪し調査を始めるところから始まる。公の心の中を行き交う二人の女性、所属する法律事務所課長と父親との関わり、今回の事件にも影響した組織の影、そして、父親の死の真相。すべてが繋がり、エンディングへと向かう。沢辺を救出した安堵感には、主人公佐久間公の心情に触れた気がした。ヒリヒリした感触が今でも残っている。
大沢在昌のデビュー作。荒削りで危なっかしい内容に仕上がっているのが心地良い。のちに『新宿鮫』という人気作品を上梓する大沢作品の1作目として未来を感じる。ギアをサードギアに入れて、これからハイウェイに走り出す直前だ。所々に散りばめられている『ザ・ドライバー』ライアン・オニール、サンタ・エスメラルダ、『朝日の当たる家』アニマルズ、エリック・カルメン、サッチモ、矢沢永吉、松任谷由実といった固有名詞がくすぐってくれる。ほろ苦さと爽やかさの入り混じったエンディングがニクい。ここから大沢ハードボイルドが始まった!!
「失恋してきれいになるのよ、女は」 「毎日」がいちばん偉い。 (本文より) 婚約破棄された女性が自分の良さを発見しながら成長していく。そして、美味しいごはんを食べられて、何気ない日常を送ることが、どれだけ大切なのかを気付かせてくれる。 ほのぼのとした自分応援小説♪
めちゃくちゃおもしろい!! これが素直な感想だ。最初は登場人物が多くてどうなるかと思ったが、点と点がつながり線になるように、登場人物同士に関係性が出てくると、途中からは夢中になり一気に読み終えた。 登場人物もバラエティーに富んでて、それぞれの特徴が凝っている。普通のOLにサラリーマン、普通じゃない?OLにサラリーマン、大学生、リタイアした老人、少女タレント、警官、過激派、テレビキャスター、ハリウッドの有名映画監督、そしてダリオ(←これは本で確認してね!)。 恩田陸は、感動小説の作家と思っていたが、こんな超絶おもしろいエンタメ小説も書けるスゴ腕の作家だ!
本を読むのが楽しくなる!! 夢と希望とよろこびに満ちた素敵な小説だ。軽やかにページをめくり、次々と情景が流れてくる。ピアノの音が心地良く聴こえてきて、本を読んでるのか、音楽を聴いているのかわからなくなってしまう。 何よりも音楽に対する表現がとても良い。ピアノコンクールが舞台なので、課題曲それぞれを描くのに、物語的な描写で描かれている。これがとても良くて引き込まれてしまう。今までこんな表現は聞いたことがない。クラシックの曲をこんな風に表現してくれたら魅力的になるだろうなと思う。恩田陸ならではの圧倒的な表現力に敬服するしかない。 コンテスタント四者四様のストーリーが絡みながら進み、誰が優勝するのだろうと楽しみながら読み進めた。でも、後半になればなるほど、優勝者は誰でも良くなっていき、感動だけが膨らんでいった。読み終えた感動が今でも余韻となっている。 こんな良い小説を読んだら、ピアノコンサートに行きたくなるよね♪
スケールが大きい!史実に基づいたフィクションということだが、1930年代に日本製の飛行機で世界一周する、女性パイロットが活躍するストーリー。原田マハの著書で初めて読んだ作品。飛行機を題材にした本を探していてこの作品を選んだ。この作品をきっかけに『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』などの原田作品を読んでいくことになる印象深い作品。
うるうるしっ放しの小説だ!1回だけかと思ったら、2回もうるうるさせられてしまった。「旅屋」という仕事に感動は生まれるのだろうかと疑っていた。だって、頼んだ人の代わりに旅をするのは良いけど、頼んだ人はどうやって感動するのか半信半疑だった。でも、違った。うるうるしてしまった!難病の娘のために代わりに旅に出掛ける。離れ離れになってしまった姪に会いに代わりに旅に出掛ける。この2つの「旅屋」の話から大きな感動が生まれる。人情物語と言って良い程、人の心の機微を描いている。原田マハの魔法にかかってしまった。「いってらっしゃい」と送り出してくれて、「おかえり」と迎えてくれる。こんな良い小説を読むと旅に出掛けたくなるね ♪
感動が止まらない!!スピーチライターを題材にした小説。作品中のスピーチ部分に感動して、作品全体を読むのにも感動するので、二重に感動する作品になっている。まさに感動の嵐だ。日米の政権交代を舞台にした実話なのかと思わせるような展開がたまらなく良い。著者自身が本物のスピーチライターなのかと思ってしまうほど小説を越えた小説に仕上がっている。原田マハの操る言葉の魅力にまいってしまう。原田マハの作品は多彩でジャンルが幅広い。良い作品ばかりだけど、一番の作品はこの作品かな♪
タイトル通りの重い内容になっている。2つの別々の事案が、だんだんと互いに近づいていく。呼吸を忘れるほど集中して読んでいった。派手なアクションシーンのない、心理描写重視の映画のようだった。まさに、渋谷を舞台に“現代”を描ききった傑作巨編!
佐久間公シリーズ幻の処女長編小説。幻と言われるのは長く絶版の時期があり読者熱望により復刊したため。佐久間公シリーズが好きなら必読の作品だ。主人公の動きがストレートで大胆で、大沢作品初期の感じがして良い。
予期せぬ事態と予期せぬ真実の連続に引き込まれてしまった!佐久間公シリーズ初の長編小説は、公の親友沢辺が失踪し調査を始めるところから始まる。公の心の中を行き交う二人の女性、所属する法律事務所課長と父親との関わり、今回の事件にも影響した組織の影、そして、父親の死の真相。すべてが繋がり、エンディングへと向かう。沢辺を救出した安堵感には、主人公佐久間公の心情に触れた気がした。ヒリヒリした感触が今でも残っている。
大沢作品で一番最初に読んだ小説。書店では何冊かあったと思うが、どうして選んだかというと、タイトルに「街角」とあったことや主人公の職業が失踪人調査の「探偵」というのに惹かれた。これはもう買うしかない!と思って選んだ。この作品から大沢熱が冷めないままでいる!!
大沢在昌のデビュー作。荒削りで危なっかしい内容に仕上がっているのが心地良い。のちに『新宿鮫』という人気作品を上梓する大沢作品の1作目として未来を感じる。ギアをサードギアに入れて、これからハイウェイに走り出す直前だ。所々に散りばめられている『ザ・ドライバー』ライアン・オニール、サンタ・エスメラルダ、『朝日の当たる家』アニマルズ、エリック・カルメン、サッチモ、矢沢永吉、松任谷由実といった固有名詞がくすぐってくれる。ほろ苦さと爽やかさの入り混じったエンディングがニクい。ここから大沢ハードボイルドが始まった!!
この本は、セールスやマーケティングにおける顧客心理の重要性を30の法則で解説しています。著者は、テレビ通販での成功経験を基に、心理的トリガーを用いて営業成績を向上させる方法を示しています。具体的なエピソードを通じて、複雑な心理を理解しやすく伝え、読者が実践できる内容となっています。メンタリストDaiGo氏や世界一のセールスマン、ジョー・ジラード氏も推薦しており、実践的な知識を得るために読む価値がある一冊です。