選択と誘導の認知科学 (認知科学のススメ)
洗剤選びから政治的立場の決定まで、人の選択には無自覚に方向性を決める「癖」がある。選択結果を誘導する認知的環境や選択肢の設計はいかなるものか。誘導技術は善用できないのか。人の情報処理の仕組みを解明し、さらなる考察へと誘う入門書。 選択と誘導の認知科学 目次 まえがき 1章 物理的環境と選択の関係を考える ――選択に働きかける 1 街中の看板と貼り紙によるメッセージ ファストフード店での滞在時間を決めるもの 電車のシートへの座り方 公園のベンチは誰が使うのか 街中の花壇の役目 なぜ看板や貼り紙がうまくいかないのか Box 心理的リアクタンス なぜ物理的環境がうまくいくのか 看板・貼り紙vs.物理的環境 まとめ――認知的環境と選択 Box 対応バイアス 2章 デフォルトの効果――選択に働きかける 2 「選択」に働きかける デフォルト① 「質問」でのの有無は何を生むか 「オプトイン」と「オプトアウト」 デフォルト② 受診手続きと受診率 デフォルト③ 自動車保険を選ぶ デフォルト④ エネルギーを選ぶ デフォルト⑤ 臓器を提供するかしないか デフォルト⑥ お金を運用する なぜデフォルトの選択肢は選択されやすいのか 不幸になりたい人などいない 「選択アーキテクチャ」という考え方 原因と対処 自動システムと熟慮システム 興味や関心を刺激する働きかけと比較する ミシュランのグルメガイドブックの起源は? フォルクスワーゲンの「ファン・セオリー」 興味や関心を刺激する働きかけとの違い まとめ 3章 選択肢を分割する効果――選択に働きかける 3 オバマ政権は支持されていたか 分割の効果① 自動車が動かない原因を考える 分割の効果② デート相手を選ぶ 分割の効果③ ホテルを選ぶ 分割の効果④ ワインを選ぶ 分割の効果⑤ 防衛政策を判断する 選択肢の操作で世論は変わるか まとめ 4章 よい働きかけとはどういうものか ――選択に働きかける 4 選択アーキテクチャにはさまざまな問題がある 「する」と「しない」は同じか 「する」が満足に与える効果 「する」と「しない」から行為者の意図を読み取る 「する」は心理的な関与を高める デフォルトは規範を変える 選択と自律 一般人の反応 まとめ 5章 「理由」は選択を正しくあらわしているか ――選択を説明する 1 選択とそのための理由 経路実験――どうやって「経路」を選ぶか ストッキング実験――置く位置か品 「理由」はあてにならない 条件づけ――良いものと一緒にされると好きになる 単純接触効果――見るほどに好きになる サブリミナル効果――見えない刺激の力 働きかけに抵抗する人もいる 洗剤実験――選択の根拠は効能か反復か まとめ 6章 「差別していない」は本音か言い訳か ――選択を説明する 2 「オートコンプリートの真実」 「母親 無職」と「父親 無職」に続くのは? 性別役割分担意識 ドクター・スミス課題 性別役割分担意識とステレオタイプ 職業と性差別 客観性の幻想 差別と曖昧さ まとめ 7章 無理に理由を考えるとどうなるか ――選択を説明する 3 絵画実験――「2つの絵画について答えてください」 好かれも嫌われもする作品 好悪の理由を分析するのは難しい 難しくても,無理に理由を分析すると何が起こるか 「不自然な理由」が作り出される 目隠しテストで芸能人を格付けチェック テイスティング方法と評価の関係は? 「ペプシ・パラドクス」現象 「ペプシ・パラドクス」を考え直す ペプシ・コーラとコカ・コーラの味の「違い」とは 「ペプシ・パラドクス実験」もう一度 「ペプシ・パラドクス実験」のまとめ まとめ――「もっともらしい理由」を作って決める判断とは あとがき 文献一覧 索引 装幀=荒川伸生 イラスト=大橋慶子